三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の亀澤宏規社長は日本経済新聞のインタビューで「人工知能(AI)の本質は人の仕事の代替ではなく拡張だ」と指摘した。AIを使って自分の考えを広げることに価値があると説く。AIロイヤー(弁護士)やAIエコノミストが社員の壁打ち相手になってビジネスを進める考えを示した。
亀澤社長は10月9日に開く「金融ニッポン」トップ・シンポジウムに登壇する。AI時代の金融経営を問われ、AIと人が共生する企業文化の醸成が大事になると答えた。「AIはもう完全にコミュニティーの一員」だと語った。
三菱UFJは連結ベースで国内外にいる約15万人の社員を対象にAIの浸透を促す運動を始めた。社内の生成AIツールを相棒になるという意味で「AI-bow」と名付け、議事録の作成や翻訳、顧客分析など日常的に1万5000人以上が利用している。AIロイヤーやAIエコノミストなど業務を支えるAIのエキスパートチームをつくる計画だ。
新興企業との連携や外部人材の採用も進める。三菱UFJは5月、米グーグルの出身者らが設立したSakana AI(サカナAI、東京・港)と提携し、共同創業者の伊藤錬氏をAIアドバイザーに迎えた。複雑で高度だと思われている仕事にもサカナとの連携で対応できると判断し「法人担当者に指導する側のAIを作る」という。

1986年(昭61年)東大大学院修了、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。ニューヨーク支店長やシステム・デジタル部門のトップを歴任。副頭取兼三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長を経て20年4月から現職
AIを推進するCoE(センターオブエクセレンス)と呼ぶ部署は300人体制にする計画だ。24年度だけで100人をテック企業などから採用し、25年度も100人増やす。亀澤社長は「データと顧客基盤、ブランドがあるのが強みで、スキルを生かす場を求めて来てくれる」と話す。外部人材の入社で企業風土も変わってきたという。
三菱UFJは10月に発足から20年の節目となる。リーマン・ショック時に米モルガン・スタンレーへの大型出資を決めたり、2010年代にアジアの商業銀行を買収したりした。自己資本利益率(ROE)は3メガバンクではトップとなる10%近くまで高めており「ROEで12%、時価総額で30兆円超を目指す」との目標を語る。
6月には個人向け金融サービスのブランド「エムット」を始めた。亀澤社長は「デジタルで変化する世界に寄り添うサービスを提案する」と話す。海外ではアジアと米国の収益を拡大する考えを示した。
「金融ニッポン」シンポジウム◇日時、会場
10月9日(木)午後1時〜2時30分、日経ホール(東京・大手町)。入場無料
◇申し込み
会場での参加はウェブサイト(https://www.nikkei.com/live/event/EVT250807003)からお手続きください。10月1日(水)に締め切ります。
◇講師 木原正裕・みずほフィナンシャルグループ社長、奥田健太郎・野村ホールディングス・グループ最高経営責任者、亀澤宏規・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長、荻野明彦・大和証券グループ本社社長、中島達・三井住友フィナンシャルグループ社長
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