
オリジナルデザインの骨つぼ作りに、ひつぎに入る「入棺体験」。人の死と向き合う斬新なサービスを、千葉県富津市の葬儀社「かじや本店」が提供している。平野清隆社長(48)に取り組む理由を聞いた。【宮田哲】
――会社の歩みを教えてください。

◆1902(明治35)年に青果問屋として創業し、時代とともに葬儀を行う際に道具を納める葬具屋から葬祭業へと変わりました。以前はお寺や自宅での葬儀を担当していましたが、8年前に葬儀会館を開きました。
――オリジナルな骨つぼとは。
◆家族らが故人へ、または今の自分や家族が将来の自分へ、文字や絵でメッセージをかく、世界に一つの骨つぼです。「メッセージ骨つぼ」と名付け、3年前に始めました。インクが消えにくい素焼きのつぼを販売し、描いてもらっています。
きっかけは私自身の終活で、骨つぼは死後の家のようなものなのに、既製品には入りたい骨つぼがなかったのです。これまで仕方なく選んだご遺族もいたのではと、申し訳なく思いました。
私は子どもたちに、つぼに絵を描いてもらいました。子どもたちの絵は私との思い出。そのつぼの中で眠るのはいいなと思ったし、「自分のゴールはここ。入る前に何をしようか」と前向きになりました。
――みなさんは骨つぼにどんな絵を描いていますか。
◆90代で亡くなった女性には、ひ孫たちが故人に見せてあげたいと、つぼの内側まで絵を描きました。寺の住職は母のためお経を書きました。
アイデアは多様で、ご遺族からは「本人は喜んでいるでしょう」と言われます。当社で葬儀をする方の3分の1が選んでおり、葬祭業者の仲間にも導入するよう呼びかけています。
ただ生前に自分のつぼを作る例はほとんどなく、「縁起でもない」と言われたこともあります。でも、自分のつぼを見ればうれしくなるのでは。骨つぼを前に家族で「どんな葬儀にしよう」と考えられるかもしれない。その日を思うことは、それまでの日々を大切に生きることにつながるでしょう。

――入棺体験のサービスも提供しています。
◆「入棺カフェ」の名で2024年9月から始め、30人以上が体験しました。入るのは、葬儀具ブランドの「GRAVE TOKYO」の華やかなデザインのひつぎです。悩みのある人は、ひつぎに入って出てくることで「生まれ変わった」と感じ、生きる力にしてもらえればと思います。
――メッセージ骨つぼも入棺カフェも「死」に関連しているのに明るさがありますね。
◆「お別れ」の形はもっと自由でよくて、ご遺族が望まれるなら悲しいだけでなく、明るく楽しい場面もあっていいのではと思います。例えば、メッセージ骨つぼによって、場が温まることがあります。火葬場での「お骨上げ」の時に、骨つぼに描かれた絵をみて、故人について話が弾んだことがありました。みんなで和やかに故人を思う時間も大切なように思います。
ひらの・きよたか
千葉県富津市出身。君津商高、東京簿記情報ビジネス専門学校を卒業後、家業の葬祭業に従事する。メッセージ骨つぼは9900~1万3200円(税込み)。入棺カフェ(予約制)は1人2000円(同)。問い合わせは平野さん(090・4135・3072)
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