裂果した新高を指す荒井一昭さん=千葉県市川市で2025年9月24日午前7時5分、石塚孝志撮影

 ナシの一大産地の千葉県市川市で近年、秋に取れる品種「新高(にいたか)」の出荷量が激減している。猛暑で表面が黒く変色する「日焼け」や、果実が割れる被害が広がっているためだ。今年も8割程度が出荷できない状態になっており、JAいちかわは、新高の栽培を減らしたり、他の品種に変えたりする農家が増えるとみている。

 9月下旬、市川市柏井町にある荒井一昭さん(79)のナシ畑では、早朝から収穫作業に追われていた。「先日収穫した新高のうち、出荷できたのは1割ほど。贈答用で注文を受けることも難しくなり、出荷が安定しないから市場での価格も安定しない」と嘆く。

 新高は9月下旬から10月に出荷される晩生種だ。柔らかく、甘みが強くて酸味は少なく、多汁。平均400~500グラムと大きく、見栄えが良いため、贈り物となることも多い。

日焼けして表面が黒く変色した新高=千葉県市川市で2025年9月24日午前7時2分、石塚孝志撮影

 ただ、表皮が薄く、比較的暑さに弱いため日焼けをしやすい。また、晴天が続く中、急に雨が降ると、裂果しやすいという。

裂果した新高=千葉県市川市で2025年9月24日午前7時10分、石塚孝志撮影

 JAいちかわ果樹部会顧問でもある荒井さんは「もう新高の栽培が難しいことは分かっている。県育成ナシの秋満月(あきみつき)など、暑さに強い品種に変えていきたい」と話す。

 JAいちかわによると、2021年度の市川市内の新高の出荷量は21・8万キロ。出荷量全体の約8割を占める主要4品種では、幸水(16・8万キロ)、豊水(16・5万キロ)、あきづき(7・7万キロ)を上回った。

 ところが、その後は夏の猛暑続きで新高の出荷量が23年度には2・7万キロと急減。24年度も同水準で、25年度は栽培面積の縮小もあってさらに減る見込みだ。他の品種はそこまで減っておらず、新高の落ち込みが際立つ。

 新高の栽培が市内で始まったのは50年ほど前。市内にある約200軒のナシ農家のうち約9割が新高を栽培しているという。暑さ対策として、葉を増やして日陰を作ったり、植物や土壌にとって良い状態を作り出すとされる液体をまいたりしたが、年々ひどくなる猛暑を前に短期的な効果を得られなかった。

 JAいちかわの武藤健司・市川経済センター長(44)は「暑さに強い品種への切り替えなども進めたいが、どの品種も一長一短があり、一つに絞り込めずにいる。新高は他の品種に比べて根が太く、簡単に植え替えることも難しい」と話す。例年10月中旬まであったナシの季節も、ほとんどの農家が9月中に収穫を終えようとしている。【石塚孝志】

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