楽天モバイルの矢沢俊介社長㊨が総務省からの行政指導文書を受け取った(19日、東京都千代田区)

総務省は19日、楽天モバイルに対して同日付で行政指導したと発表した。通信回線が不正契約された事件を巡り、電気通信事業法上の「通信の秘密」の漏洩について総務省への報告が遅れた点を問題視した。リスク管理体制の改善や再発防止を徹底するように厳重注意した。

同社を巡っては、他人の楽天IDとパスワードを用いて不正にログインしたうえで通信回線を不正契約したとして、2月に中高生3人が逮捕された。少年グループは生成AI(人工知能)を悪用して自作したプログラムで通信回線などの契約を繰り返していた。

総務省によると、楽天モバイルはこの事件について370件の不正契約を確認した。不正ログインにより7002回線(4609人分)の「通信の秘密」にあたる通話履歴やSMS(ショートメッセージサービス)の送受信履歴などが閲覧可能な状態になっていた。

楽天モバイルは遅くとも2月27日までに事案を認知していたにもかかわらず、6月17日まで報告していなかった。総務省は同社が法令違反の事案として対応しておらず、社内の連携不備などにより報告が遅れたと結論づけた。

電気通信事業法は通信事業者に「通信の秘密」を守るよう求めている。漏洩事案があった場合は総務省に遅滞なく報告し、30日以内に報告書を提出するよう義務付けている。報告の遅れを理由に行政指導するのは異例という。

行政指導ではコンプライアンスやリスク管理体制の改善策について10月末までに報告するよう要請した。再発防止策の取り組み状況を2026年1月末までに報告するとともに、以後1年間は3カ月ごとに報告するよう求めた。

湯本博信・総合通信基盤局長は19日午後、「このような事態の発生は極めて遺憾だ。同様の事案が発生しないよう再発防止を徹底するよう厳重に注意する」と述べ、楽天モバイルの矢沢俊介社長に行政指導の文書を手渡した。

矢沢氏は報告が遅れた理由について、警察への対応や事実関係の把握に時間を要したと説明した。「社内体制の見直しと再発防止、顧客に心配をおかけしない体制を整えるため全社を挙げて対策する」と話した。

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