
暖房機器メーカーの「ダイニチ工業」(新潟市)は、12月に家庭用コーヒーメーカーを新発売する。主力の石油暖房機器の需要は右肩下がりで縮小しており、拡大する「本格志向」のコーヒー需要を取り込むことで、新たな収益の柱にする狙いだ。
9月下旬に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれたアジア最大級のコーヒーイベント「SCAJ2025」。国内外の有名ロースタリーや大手飲料メーカーなどに交じり、ダイニチ工業もブースを構えた。

並んでいたのは、新たに開発したコーヒーメーカーだ。有名バリスタの小野光さんと天野大さんが監修。ハンドドリップのようにお湯を回し入れる仕組みが特徴で、異なるノズルとドリッパーを使うことで、2人の抽出方法を再現した「浅煎り」と「深入り」の二つのモードで注ぐことができる。
ダイニチ工業は1964年創業。従業員数500人弱の中堅メーカーで、家庭用石油ファンヒーターでは国内トップクラスのシェアを持つ。一方で、国内の石油暖房機器の市場はエアコン暖房の普及などで縮小傾向にある。同社では暖房機器事業が売上高全体の約7割を占めており、新規ビジネスの創出が課題となっている。
そこで目をつけたのがコーヒーだ。人口が減少する中、国内のコーヒー市場は拡大傾向にあり、近年は品質の高い「スペシャルティコーヒー」への関心が高まっている。新型コロナ禍により、自宅でコーヒーを飲む機会が増えたこともあり、高級志向も進んでいる。
同社は暖房機器の製造で培った「熱」や「風」を正確に制御するノウハウがあり、1997年から焙煎(ばいせん)機能付きコーヒーメーカーの製造や販売を手がけていた。ただ、当初はオフィス向けが中心で知名度は低かった。
創業者の孫で2022年に社長に就任した吉井唯さん(49)が「もう一度コーヒー事業をやろう」と号令をかけ、新商品の開発とブランドの再構築を進めた。コーヒーメーカーの開発は、監修した2人のバリスタに納得してもらうまで、1年以上の試行錯誤が続いたという。
吉井社長は「開発から製造までを一貫して手がけており、丁寧に作り込む技術には自信がある。他社のコーヒーメーカーと比べても、当社のものが一番おいしいと思える仕上がりになった」と胸を張る。
発売は12月24日。価格は4万9830円。自社サイトを中心に販売する。【成澤隼人】
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