高市早苗氏は自民党の新総裁に選ばれた後、党所属の国会議員を前にしたあいさつで「私自身もワーク・ライフ・バランス(WLB)という言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」と述べた。

 この発言に、「全国過労死を考える家族の会」代表世話人の寺西笑子さん(76)は「国のトップに立とうとする人の発言とは思えない」と驚く。

 寺西さんは、1996年に夫の彰さん(当時49)を過労死で亡くし、働き過ぎて命を落とす人が続出していた日本の状況を変えようと、「命より大切な仕事はない」と訴え続けてきた。

 「過労死防止法は国会の全会一致で成立し、国をあげてWLBを推進している。高市氏は『懸命に働く』という意図だったかもしれないが、法律をないがしろにする発言で問題だ。影響力をもっと重く考えてほしい」と話した。

 労働法に詳しい脇田滋・龍谷大名誉教授は「古い日本の価値観を引きずったような発言で、非常に残念だ」と話す。

 EUでは2019年、男女間の雇用格差を是正し、生活の質を高めることを目的とした「ワークライフバランス指令」が発効。すべてのEU加盟国で、父親に出産前後の休暇取得を認めるなどの法制化が実現した。

 脇田氏は「海外ではトランプ大統領でさえ休暇をとっている。時代に逆行した振る舞いにならないよう、政治家として正しいメッセージを発信するべきだ」と注文をつけた。

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