NTTイードローン「BB102」の飛行風景=同社提供

NTT東日本グループのNTTイードローン・テクノロジー(埼玉県朝霞市)は、農作物に被害を与える鳥獣をレーザーで追い払う新たな小型ドローン(無人機)を開発した。自動航行機能も搭載し、鳥獣害対策の負担や時間を軽減できる。商品化に向けては神奈川県が実証実験を後押しした。鳥インフルエンザ対策を推進する千葉県は、独自の補助金事業を通じ、ドローンの導入拡大を支援する。

10月から提供を開始した「BB102(Bird&Beast102)」は、鳥獣の忌避効果のある「クルナレーザー」を搭載した国内初のドローンだ。赤と緑の光をランダムに照射し、鳥獣を退避させる。音や防護ネットなどの対策と比べ、鳥獣が慣れにくいという。

送信機の画面で飛行範囲を設定すると自動航行する=NTTイードローン提供

操作性にもこだわった。送信機に表示された地上の図面から飛行範囲を設定することで、自動航行が可能だ。送信機にはボタン一つで離着陸できるアシスト機能も備えており、初心者でも扱いやすい。本体の重量は6.1キログラムで、運搬時にはコンパクトに折りたたむことができる。

ドローンではハトやカワウ、シカやイノシシなど幅広い鳥獣を対策できる。同社は神奈川県内の養鶏場で1〜2月、カラスの群れに照射する実験を行ったところ、実施前は屋根の上などに80羽ほど確認されたが、実施後は0羽になったという。

この実験では、神奈川県の支援を受けた。県は3年以内に実用化を見込めるドローン事業に最大800万円を支援する「ドローン実証実験プロジェクト」を運用しており、2024年度に同社が採択された。

幕張メッセで開催された「第15回農業WEEK」に実機を展示した(2日、千葉市)

同社は発売に合わせ、1〜3日に幕張メッセ(千葉市)で開催された「第15回農業WEEK」に実機を展示。「農業・畜産業の関係者、自治体の農政課の担当者など幅広い顧客から、興味を持ってもらった」(同社)という。初心者の講習受講費を含む参考価格は税込み330万円で、25年度中に30台、26年度には100台、27年度に150台の販売を目指す。

農林水産省によると、23年度の農作物被害は164億円で、22年度から8億円増えた。被害量は51万トンで、同4万トン増となった。長期的には減少傾向にあるものの、農業・畜産業の現場では高齢化が進んでおり、鳥獣害対策の省力化が課題となっている。

こうした状況を背景に、新たに開発したドローンは既に本格的な運用へ動き出している。同社やNTT東日本の千葉事業部(千葉市)は10月中旬、千葉県と連携し、県内の養鶏場で鳥インフルエンザの発生・罹患(りかん)を防止するために導入を進める。

県内では1〜2月、330万羽以上の養鶏が殺処分となり、鳥インフルエンザ対策は急務だ。県は7月から「家畜伝染病対策緊急強化事業」を運用している。先進的な発生予防対策の導入を検討する養鶏事業者の協議会などを対象に、費用の最大3分の1を補助する事業で、同社のドローンも対象に含まれる。

NTTイードローンは、朝霞市でドローンを製造していたエンルートからの事業承継、NTT東日本など3社による共同出資などを経て設立。21年に事業を開始した。25年には農業用ドローンの開発を手掛けるナイルワークス(さいたま市)から事業を譲り受けるなど、先端技術を結集させている。海外メーカーに依存しない国内市場の活性化を目指す。

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