
公開中の映画「国宝」で、ロケ地の一つとなった大津市柳が崎のびわ湖大津館に映画鑑賞者や出演俳優のファンらが多数訪れている。ロケの様子などを紹介した同館での特別パネル展示は当初、8月末までだったが、9月下旬まで延長されることに。ロケ地マップも追加印刷を重ねている。映画は6月6日の公開後話題が広がり、配給元の東宝は8月18日、興行収入が100億円を突破したと発表した。【岸桂子】
映画「国宝」(李相日監督)は吉田修一さんの同名小説が原作で、歌舞伎界に外から飛び込んだ男性、喜久雄の数奇な生き様を描く。人気俳優の吉沢亮さんが主演を務め、横浜流星さんが喜久雄の合わせ鏡となる重要な役を演じる。
びわ湖大津館は1934年、県内初の国際観光ホテル「琵琶湖ホテル」の本館として建てられ、ヘレン・ケラーら国内外の著名人が訪れた。設計したのは、東京・歌舞伎座の第3期(1924年完成)を手がけた岡田信一郎。桃山風破風(はふ)造の優美で堂々とした外観が特徴だ。1998年に同ホテルが市内の浜大津に移転し、大津市が建物を譲り受け文化施設に。外観の雰囲気が歌舞伎座とうり二つとロケ地に採用されたという。

映画では、歌舞伎が上演される「日乃本座」の外観として、またロビーでのシーンが撮影された。現在も、入り口や階段を彩る赤じゅうたんや桜柄のカーペットの一部がそのまま残されている。また、受付近くの丸い柱には「喜久雄が触れたあの柱」という小さな表記があり、映画を見た人が思い返して楽しめる仕掛けも。
若代光弘副館長(51)によると、公開直後から映画ファンらしき人は訪れていたが、夏休みに入って増え、多い日で40~50人ほど、老若男女と幅広いという。「これまでもレトロな調度品やカウンターなどを生かした映像作品のロケはありましたが、建物自体がクローズアップされたのは初めて」と話す。
県内での映像制作を誘致・支援する滋賀ロケーションオフィスは、同館の見取り図や撮影風景などを紹介した「ロケ地マップ」を2万5000部作成した。担当者によると、公共施設や映画館からの要請が引きも切らず、その後、3回追加印刷したという。
愛知県一宮市から墓参で大津入りし、大学生の娘2人と共に同館を訪れた女性(51)は「映画は2回見ました。以前から気になっていながら来たことがない建物だった。雰囲気あって感動しています」と笑顔を見せた。
「この建物を大事に残していかねばならないと改めて使命を感じています。この機に県内外から多くの方にきていただければ」。若代さんは力を込めた。
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