在宅の難病患者らが受付に配置した小型ロボを通じて来店客に声をかける(大阪市此花区)

ロイヤルホールディングス(HD)とコカ・コーラボトラーズジャパンが大阪・関西万博の会場で運営するレストラン「ラウンジ&ダイニング」で、接客係として「分身ロボット」が活躍している。病気などで外出が難しい人が全国各地から遠隔で操作し、来店客に声かけする。未来の多様な働き方を提示している。

「面白い、話せるんだ」。来店した大阪府富田林市在住の池川成子さん(69)が受付近くのロボットに声をかけると、声で返してきた。「人工知能(AI)だろうと思っていた」というが、実は身体が不自由なために在宅を余儀なくされる人らがオンラインで操作している。店内には2台のロボットが稼働している。顧客にあわせて顔の向きや腕を動かすこともできる。

操作を担う「パイロット」の一人、ちふゆさん(仮名)は2013年に慢性疲労症候群と呼ぶ難病を患った。10メートルほどの距離を歩くのも困難で、車椅子生活が続いている。「好奇心をもってフレンドリーに話しかけてくれる人が多いのでうれしい」と話す。

ロイヤルHDなどが運営するレストランでは遠隔操作ロボが接客する(大阪市此花区)

ロボットの開発や提供、パイロットの手配を手掛けるオリィ研究所(東京・中央)の担当者によると、ロイヤルHDの従業員も含め29人が店内のロボットの操作に関わっている。

レストラン会場の総支配人を務めるロイヤルHDの鈴木貴博氏は「顧客の待ち時間が発生したときに、ロボットと会話することで長さを感じさせないといった良い効果があった」と話す。だれもが生き生きと働くことのできる環境をテクノロジーで実現する。こうした万博の取り組みが社会で花開くことが期待される。

(柘植衛)

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