中古の電気自動車

日本総合研究所は21日、2024年までに日本から海外に流出した中古の電気自動車(EV)が、国内の中古EVの約83%を占めたとする試算を発表した。EV電池に含まれるコバルトなどの希少金属の総額は推計で約175億円に相当するという。

日本総研の籾山嵩氏は21日に都内で開いた記者会見で、走行可能なEVや電池に含む希少金属の国外流出を防ぐため、国内で再生網を整える必要性を指摘した上で「中古EVの循環が成り立つことで、電池の品質を保証するサービスなどの新規事業も生まれる可能性がある」と市場創出の意義を強調した。

日本総研の試算によれば、24年までに輸出された中古EVの台数は約9万4000台で、中古EVに搭載されたリチウムイオン電池に含まれるリチウム、ニッケル、コバルトの総量は約4300トンになるという。まだ走行できるにもかかわらず、国内で再び流通しないまま輸出された中古EVが多く含まれる。

使用済みEV電池の性能や安全性を短時間で正確に担保できる技術が少ないなどの理由から、国内での中古EV市場は発展途上だ。充電できる容量がどの程度減っているかなどの情報を消費者が得られず不安を抱きやすく、中古EVの引き合いが弱い傾向にある。

記者会見に登壇した日本総研の籾山氏(21日、東京都千代田区)

現在日本はEV電池に使う希少金属のほとんどを中国や東南アジア、南米などから輸入している。中古EVの電池に含まれるニッケルやコバルトなどは専用の工程で精錬すれば再利用が可能だ。海外に中古EVの電池が流出すれば、国内で再利用できる可能性のある希少金属を失い輸入に頼る状況が続くおそれがある。

EV電池の再利用を巡っては東芝が約1分で中古EV電池の劣化度合いを診断する技術を開発したほか、JX金属などの非鉄各社も希少金属のリサイクルの準備を進めている。こうした資源を守るための取り組みを後押しする政策の策定や、官民の連携が必要になることを示した。

BUSINESS DAILY by NIKKEI

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