
米グーグルの量子研究部門責任者のハルトムート・ネベン氏は量子コンピューターが「5年以内に実用化されるだろう」との見方を明らかにした。実機と計算技術の両面で研究を進めており、創薬や材料開発などの分野で実用化できると主張した。
グーグルは23日、量子コンピューターで計算結果の正しさを一定水準で担保しながら高速に計算できる新技術を発表した。温度や放射線などの影響で計算結果がぶれやすい量子コンピューターの欠点を補い、信頼できる計算結果が得られやすいという。
量子コンピューターは従来のスパコンでは解くのに数万年もかかる問題の一部を解くことができる。ただ計算結果が本当に正しいかどうかを確かめるのが難しいという課題があった。
研究ではグーグルの量子チップ「ウィロウ」を使った。チップ内の1つの素子を刺激すると、隣り合う素子に情報が伝わって波のように広がる。このとき、時間を巻き戻すように情報が進む向きを逆転させる操作を施す。この様子を記録することで量子コンピューターの動作の正しさを担保しつつ計算できることを示したという。

米プリンストン大学や独マックス・プランク研究所などとの共同成果で、23日付の英科学誌「ネイチャー」で報告した。研究チームには2025年のノーベル物理学賞に決まったミシェル・デボレ氏も加わっている。
研究では計算素子である「量子ビット」を65個使った。ネベン氏は「実用化には量子ビットが100万個ほど必要になる」としている。大規模な量子コンピューター上で今回の成果を応用すると、たんぱく質などの分子の構造をこれまでより詳細に把握できるという。
25年のノーベル物理学賞は量子コンピューターの基礎技術を開発した3氏に与えられる。デボレ氏のほかカリフォルニア大のジョン・マルティニス氏もかつてグーグルの量子研究を率いた。19年に世界で初めて量子コンピューターがスパコンの能力を超越したと発表した。
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