通勤する人たち(東京・丸の内)

パーソル総合研究所は28日、副業を容認する企業の割合が64%と過去最高になったと発表した。そのうち、ルールや制限なく全面的に容認する企業の割合も、副業が実質的に解禁された2018年の約2倍になった。雇用契約で副業する人のうち本業とあわせて月45時間以上働く人は3割に上り、「過重労働」の問題も浮き彫りになった。

「副業の実態・意識に関する定量調査」として、厚生労働省がモデル就業規則を改定して副業を原則容認する方針に転じた18年から実施している。25年の調査は8月1〜7日に20〜50代の正社員と、企業の人事担当者に対してインターネットを通じ実施した。正社員の有効回答数は3万8766件、人事担当者は1500件。

企業の副業容認率は64%と、前回の23年調査から3ポイント上昇した。副業者を受け入れる企業の割合も29%と5ポイント増え、過去最高となった。

正社員の副業実施率は11%と、23年から4ポイント増えた。特に20代男性の実施率が20%と23年比11ポイント増え、伸びが顕著だった。平均時給は3617円と23年から699円上昇し、調査開始以降で最も高くなった。月間の副業活動時間は平均23時間。20代で23.9時間、50代で21.7時間と若年層ほど長くなった。

一方で、副業で過重労働になり「仕事に支障をきたした」「体調を崩した」と答えた人は計26.9%に上り、過去最高になった。企業側も副業を認めることで「従業員の過重労働につながった」「従業員が疲労によって業務効率が低下した」と2割近くが答えた。

雇用契約を結ぶ副業の場合、送り出し企業と受け入れ企業には副業実施者の本業と副業の労働時間を通算して法定労働時間の順守状況を確認するルールが課される。雇用契約による副業実施者のうち、本業での残業時間と副業での活動時間が通算で45時間以上を超えた人は34%に上った。そのうち半分以上が、本業先へ副業していることを報告していなかった。

パーソル総研の中俣良太研究員は副業容認率などの上昇について「単なる量的拡大にとどまらず、個人のキャリア戦略が企業という枠を超えて動き出したことの証左だ」と指摘する。一方で「副業による過重労働は過去最悪の水準に達し、企業が把握できない『隠れ過重労働』のリスクも顕在化している」と述べた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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