
三菱商事は7日、東南アジアのブルネイで天然ガスを採掘する事業に参入すると発表した。投資額は約400億円で、2030年の生産開始をめざす。同国では長く液化天然ガス(LNG)の生産に参画しており、上流の権益を新たに獲得する。人工知能(AI)などの電力消費増で世界的にLNG需要は底堅いとみて、収益源を広げる。
ブルネイ沖にある新鉱区「CA2」で権益の18.75%を取得する。マレーシア国営石油会社ペトロナスの子会社と、ブルネイ国営のブルネイエナジー・エキスプロレーションとの共同出資となり、3社が最終投資決定で合意した。総事業費は約14億ドル(約2100億円)とみられ、そのうち三菱商事の投資額は約2億7000万ドルとなる。

三菱商事は上流の天然ガス開発ではマレーシア、オーストラリア、ロシア、インドネシア、カナダで権益をもち、ブルネイが6カ国目となる。生産が安定すると、LNGに換算して290万トンのガスを生産できる見通しだ。海底を掘削してガスをパイプでくみ上げ、同国の沿岸部にあるLNG生産設備に送り、運搬しやすいように液化する。
同設備はブルネイで唯一のLNG生産事業で、三菱商事は69年に参画した。年間生産能力で約180万トンにあたる25%分を出資し、ブルネイ政府と英シェルと共同で運営中だ。三菱商事がブルネイLNG事業から現在得ている純利益は非開示だが、ガスの生産が順調に進めば、液化事業と合計して少なくとも100億円以上の純利益を見込む。
日本の財務省によると、24年度で日本全体のLNG輸入量のうち、オーストラリアが約38%、マレーシアが約16%で、米国(9%)、ロシア(9%)と続く。約4.5%のブルネイは日本などのアジア諸国に近く、輸出しやすい。ブルネイ事業の強化によって日本にとってエネルギーの安定調達にもつながる。
三菱商事はLNGの生産能力では日本企業で最大の事業者で現在、世界全体で年約1490万トンを持ち、30年代前半に1800万トンに増やす方針だ。6月には約210万トン分の権益をもつカナダのLNG生産事業が出荷を始めた。24年度から25年度にかけてマレーシアでもLNGの権益を増やした。
同社のエネルギー部門の純利益は26年3月期は前期比20%減の1580億円を見込む。LNGカナダの生産開始に伴うコストの計上などが影響する。
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