スバルはEV戦略を見直す

SUBARU(スバル)は10日、2030年までに1兆5000億円を投じる電動化計画を見直すと発表した。電気自動車(EV)の投資を減らし、ハイブリッド車(HV)などの開発を強化する。主力の米国ではEV購入時の税控除が終了するなど逆風が吹く。自動車業界でEV戦略を修正する動きが広がっている。

「HV需要の高まりや内燃機関が再評価されている状況を踏まえると、本格的なEV量産投資のタイミングを遅らせることが適当だ」。大崎篤社長は同日の決算説明会でこう述べた。

スバルはこれまで電動化投資として30年までに1兆5000億円を投じる方針を掲げてきた。今後は名称を「成長投資」に改める。総投資額は変えないが、着手済みの3000億円を除いた1兆2000億円の内訳を見直す。具体的な金額の内訳は公表しなかった。

EVの量産化投資を減らし、HVやガソリン車などの内燃機関車への投資を拡大する。「多様なニーズに応える商品ラインアップを拡充する」(大崎社長)とし、新車種や新型車の投入も検討する。

EVの開発については、26年末までにトヨタ自動車と連携して多目的スポーツ車(SUV)のEV4車種を投入する計画は変えない。一方で、28年までに自社開発で追加するEV4車種に関しては投入を遅らせることを検討する。

米国ではEV購入時に最大7500ドル(約115万円)の税額控除が適用される制度が9月末で終了した。世界的なEVの需要減速を受け、自動車業界では戦略を見直す動きが相次いでいる。

7日、トヨタが福岡県内で進めていたEV向け電池工場の建設計画を再度延期することが明らかになった。日産自動車は5月、北九州市に建設予定だったEV向けの電池工場の計画を断念した。

スバルは4月に国内で発売した新型のSUV「フォレスター」などで、トヨタのハイブリッド技術とスバルのエンジン技術を組み合わせた機構を採用した。燃費性能が高いHVへの消費者の需要は底堅いとみて、さらに技術を高める考え。

同日発表した2025年4〜9月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益が前年同期比5%増の2兆3856億円、純利益が45%減の904億円だった。

トランプ米政権の自動車関税が営業利益で1544億円の下押しとなった。米国で販売する車両のうち半数程度を日本から輸出している。

26年3月期は純利益が前期比53%減の1600億円とする予想は据え置いた。通期では関税で2100億円の影響を見込む。

高関税の新常態に対応するため、30年までに2000億円規模のコストを削減するプロジェクトを立ち上げた。HVを含めた商品の販売増により、厳しい事業環境を乗り切れるかが試される。

(太田聖哉)

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