アサヒグループホールディングスの本社が入るビル(中央)=東京都台東区で2018年10月31日、宮武祐希撮影

 大手ビール各社が13日発表した10月の販売実績は、アサヒビールの売上金額(概算)が前年同月比9割超にとどまる一方、キリンビール、サントリー、サッポロビールの3社は合計で18%増えた。アサヒは、親会社のアサヒグループホールディングスが9月末にサイバー攻撃を受けて受発注システムの障害が続くなか、主力商品を中心に手作業で受注を再開したものの、明暗が分かれた形となった。

 アサヒによると、10月から出荷を再開しているアサヒビールの商品は、平常時の売り上げ構成比の約8割に相当するという。「スーパードライ」などを優先し電話やファクスで受注をこなしており、業界では「想定されたほど減っていない」と驚きの声も上がる。

 ただ現在もシステムの完全復旧は見通せず、販売実績の集計も手作業でしている。アサヒのシステム障害の影響で、飲食店では業務用の生だるや瓶などの供給が不足し、他社製品に切り替える動きも相次いだ。

 こうしたなか、キリンは、ビール類の売り上げ収益が19%増と大きく伸びた。10月発売の新ブランド「グッドエール」が寄与したほか、「一番搾り」ブランドは「ホワイトビール」が押し上げて販売数量が12%増。業務用の需要も増え、「一番搾り」などのたるや瓶は出荷調整が続いている。

 サッポロは、ビールの販売数量が19%増だった。季節限定商品なども好調で、主力の「黒ラベル」ブランドは27%増の186万ケース(大びん換算)と急増した。既に「黒ラベル」や「ヱビスビール」などのたるや瓶の増産体制が整い、出荷調整は緩和されているという。アサヒの影響で数億円の増益を見込んでおり、2025年12月期の通期業績予想を上方修正した。

 サントリーは、ビール類合計の販売数量が前年同月並みだった。家庭用は前年好調だった新商品の反動減で1%減ったが、業務用は13%増えた。

 一方、アサヒはビール以外で落ち込みが目立った。アサヒ飲料の10月の売上金額は前年同月比6割程度に減少。出荷を順次再開し、10月最終週の売上金額は8割程度に回復した。アサヒグループ食品も売上金額は同7割超どまり。粉ミルクやベビーフードなど社会的ニーズが高い分野の商品を優先的に出荷しているという。【佐久間一輝】

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