KDDIは17日、携帯電話ブランド「au」の料金プランを刷新すると発表した。傘下の金融サービスを組み合わせた特典を拡充する。利用者向けに動画配信サービス「ネットフリックス」を期間限定で実質無料にする販促策も始める。携帯通信は大手が相次いで値上げを表明した。関連サービスを主軸にした顧客獲得競争が本格的に始まる。

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12月1日から、傘下の金融サービスを使うと特典が受けられる新プラン「auバリューリンク マネ活2」を始める。従来プランの「auマネ活バリューリンクプラン」と同様にデータ容量は使い放題とし、月額料金は9328円で変えない。キャッシュバックやポイント付与分など特典を全て考慮した場合の実質の月額料金は3528円で、従来プランと比べると700円安くなる。

携帯サービスと銀行併用、実質金利年1.5%も

根強い消費者の貯蓄志向に対応して、銀行サービスとの連携を中心に特典を刷新したのも特徴だ。グループのネット銀行「auじぶん銀行」を使った場合に、普通預金残高50万円以上で月550円を現金で返す。さらに通信料金の支払いで同銀行やクレジットカード「au PAYカード」を使うと、最大で月1650円を現金付与する。

米スペースXの衛星通信網「スターリンク」を活用したスマートフォンとの直接通信サービスについて、2025年度内に米国で利用できるようにするとも発表した。米Tモバイルと連携する。au利用者は無料で利用できる。

新プランの発表会で握手を交わすKDDIの松田浩路社長（左）とネットフリックスの下井昌人シニアディレクター（17日、東京都港区）

「私たちは商品力に磨きをかけ、お客様ひとりひとりにバリュー（価値）を届ける。これが新たな競争力だ」。17日、東京都内で開催した新プラン発表会で松田浩路社長は語った。

KDDIは動画配信でも手を打つ。auや低価格ブランド「UQモバイル」の利用者を対象に、12月から26年4月末までネトフリの広告付きプランの月額料金890円を割引して実質無料とする。26年3月開催のワールド・ベースボール・クラシック（WBC）の独占配信を予定し、配信国内最大手でもあるネトフリの利用者をさらに取り込む狙いだ。

25年に入り、KDDIやNTTドコモは主力ブランドを含めて、ソフトバンクは低価格ブランドで相次ぎ料金プランを値上げした。楽天モバイルは当面値上げはしないとしているが、物価高もあり、各社の競争軸は携帯の通信料金から付加サービスに主戦場がシフトしている。キーワードがKDDIが新プランの目玉とした金融と動画配信だ。

金融と動画配信、顧客獲得のカギ

KDDIは1月、三菱UFJフィナンシャル・グループ（FG）と共同出資していた同銀行の全株式を取得し、銀行業にも注力する姿勢を示す。今回の新プランを通じて預金利用を増やし、貸し出しの比率も高める考えだ。

最大手のドコモも10月、住信SBIネット銀行を連結子会社化しようやく金融に本腰を入れ始めた。新ブランドは「d NEOBANK」と銘打ち、スマホ決済サービスの「d払い」や「dポイント」といったドコモのサービスと連携する。銀行決済やローン、投資や保険商品といった金融サービスを総合的に提供していく構想だ。

動画配信も混戦模様だ。KDDIはネトフリの視聴をセットにした料金プラン提供を業界でもいち早く始めていた。楽天モバイルは10月、動画配信大手U-NEXTのコンテンツが見放題になる新たなプランを始めた。ドコモは衛星放送のWOWOWとの提携を発表したばかりでコンテンツ重視の姿勢が鮮明だ。

KDDIは今回のようなプラン拡充策で解約率を下げて利用者に長く使ってもらう。この戦略でARPU（1契約当たりの月間平均収入）を高める。8月からの値上げもあり、足元のARPUは好調だ。25年7〜9月期のARPUは前年同月比で120円上昇し4460円だった。

携帯の利用料金は通信回線の安定性などと並ぶ携帯通信各社の主要な競争軸だった。だが物価高で利用料金も上げ局面に入っている。各社とも官製値下げを経て価格だけでは体力勝負となりかねないことに警戒感を強める。各社の付加サービスはこれからが花盛りだ。価格だけでない魅力をいかに訴えるか。利用者ニーズを適切に読まなければならない難しい戦いになる。

（山本貴大）

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