ニアミーは10月28日に事業説明会を開いて高原幸一郎社長が連携拡大をアピールした
相乗りタクシーを手がけるニアミー(東京・中央)は2025年度中にも、中国の格安航空会社(LCC)の春秋航空と日本国内の空港送迎予約で連携する。経路検索サービスやホテルとも組む。これまで活用の限られていた中国人旅行客の利用を促し、相乗り頻度を高めていく。

春秋航空とシステム開発の阿宝(東京・台東)とタッグを組み、春秋航空の予約アプリとニアミーの予約システムをつなげる。航空便を予約する際にアプリ上でニアミーの空港送迎サービスを紹介する。

ニアミーは飛行機の発着時刻や人数、行き先などの情報を人工知能(AI)で組み合わせ、複数の乗客を1台のタクシーに相乗りさせる。事前予約で遠回りになる分、料金はタクシーと比べて割安になる。

ニアミーは米国や東南アジアからのインバウンド客を多く抱える一方、中国人の取り込みが遅れていた。羽田空港のほか、新千歳空港や中部国際空港など主要空港で発着する大手LCCと組んで利用者を開拓する。

26年度には中国の対話アプリ「WeChat(ウィーチャット)」上で、ニアミーの予約サービスを使えるようにする。ニアミーの高原幸一郎社長は「旅行の前段階から中国の顧客との接点を設けて、地元のタクシー会社につなぐ」と意義を強調する。

国内ではインバウンド(訪日外国人)の増加やタクシー運転手の減少が相まって、局所的に移動需要の取りこぼしも生じている。タクシーの大型化と相乗りが広がれば「今のタクシー台数でも6倍の輸送量を生み出せる」(高原社長)とみる。

ニアミーが提供する相乗りの空港送迎サービス

同社はシステム開発などにかかる人件費やマーケティング費用がかさみ、24年12月期まで最終赤字が続く。採算性を向上させるためにも「注文の数をいかに増やすかが重要だ」(高原社長)。

相乗りタクシーの利用拡大へ、国内企業とも関係を深めている。ヴァル研究所(東京・杉並)と組み、東京都心の鉄道駅と羽田空港を結ぶ相乗りタクシーの所要時間や料金を経路検索アプリに表示させる取り組みを始めた。西武ホールディングスとは東京ベイ潮見プリンスホテル(東京・江東)でニアミーの空港送迎サービスを案内してもらい、人手不足が深刻なホテルにスタッフの手間を減らしている。

観光地を巡るハイヤーの需要も取り込む。25年中にAIが判断して業務をこなす「AIエージェント」を予約システムに導入。複数の目的地や滞在時間をチャット上で入力すると、各地を周遊する配車プランの見積もりを自動で作成する。

行政とも連携し、交通網が脆弱な「交通空白」の対策需要も取り込む。沖縄県とは25年度中に一部地域で観光客と住民が相乗りしやすくするサービスを始める。観光客向けに、多言語で旅行情報などを盛り込んだ予約画面と住民向けの予約画面を別々に提供。タクシーの効率輸送を目指す。

深夜に行き先が近い乗客同士をリアルタイムでマッチングするサービスを、首都圏の一部地域で国土交通省と始めた。相乗りタクシーの配車が決まるとニアミーのスマートフォンアプリを介して他の利用者に発車時刻や行き先を通知。相乗りにつなげる。東京・渋谷エリアでは11月〜26年1月末まで提供する。

(橋本剛志)

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