NXグループでは、海外で成長していくためにM&A(合併・買収)に積極的に取り組んでいます。そこで重要になるのが相手の会社と相互理解を深めて、一体感をもって事業を運営していくことです。実りのあるM&Aにするために、社員同士の信頼関係がとても大切なのです。
まずは違いがあって当然だという前提に立って、相手を尊重することから始まります。経営理念や目標などは共有しますが、一方で社員の個性や働き方の違いをしっかりと認めながら、統合作業を進めます。

これまで当社は海外で8件のM&Aを手掛けましたが、最大は2024年に実施したカーゴ・パートナー社です。本社はオーストリアですが、グローバルに事業展開しているため、当社との間で組織や拠点の統合をする必要があり、社員が不安を抱きやすい状況でした。だからこそ経営トップ同士、そして各地の社員が慎重に時間をかけて対話し、関係を築いてきました。来年にはPMI(買収後の統合)を完了させる予定です。
世界各地で事業展開するうえで顧客の特性に応じたサービスを提供できれば、たとえコストが増加したとしても、付加価値が高まり他の物流会社との違いを打ち出せます。
一例として、イスラム教の規定に沿った「ハラール」の認証をうけた物流サービスにも取り組んでいます。イスラム教徒の方々が安心して食品を食べられるよう、生活を支える役割を担うことができます。
医薬品や半導体といった特別な対応が必要な製品についても、それぞれのニーズに特化した物流に磨きをかけていきます。
世界には分断が深まりかねない変化も多くあります。米トランプ政権の高関税政策をうけて、当社の顧客である企業は、競争力を落とさないように、サプライチェーンを再構築しようという動きが出ています。
中東やロシア・ウクライナなどの地域情勢は物流への影響も大きく、輸送手段やルートが制約されました。対応は大変ですが、当社としては、どれだけ選択肢を示せるかが問われています。
国内の社員の間でも、互いに壁をつくらず分かり合う努力が必要です。傘下の事業会社である日本通運は今年、国内を3つの大きな地域にまとめる社内カンパニー制を導入しました。主な狙いは、地域のニーズに迅速に対応しつつ、部分最適でなく全体最適で発想し、顧客の期待に応える組織へ進化することです。
世の中では世代間の意識の分断が指摘されますが、若い世代と私の世代の考え方が違うのは当然です。当社ではフラットに意見を交換できる場を職場のあちこちにつくってきました。多様な声を聞いて、自分にあった働き方ができる組織風土が、かなり定着してきたと思っています。
世界の至る所に「違い」はありますが私は希望を持っています。読者の皆さんに、お聞きします。立場や意見の違い、どう乗り越えますか。
NIPPON EXPRESS ホールディングス・堀切智社長の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちら(https://esf.nikkei.co.jp/future20251201/)から。編集委員から
「違い」をどうマネジメントするのか。現代の経営者に課せられている大きなテーマです。違いがあることはエネルギーの源であり、うまく生かせば新たな付加価値を作り出すことができます。
例えばM&A(合併・買収)についても、自社と同質の会社を買収したほうが、短期的な事業運営の面では効率的かもしれませんが、あえて異質の会社と一緒になることでイノベーションが生まれ、経営方針に幅もできるのではないでしょうか。
人材も同じでしょう。若い世代の新たな考えに対応していくのは、上の世代にとって苦労もありますが、様々な意見が交じりあえば、組織に新たな活力が生まれます。
昨今「ステークホルダー資本主義」と言われるように企業は、株主のほか、従業員、顧客、取引先、地域社会など多様なステークホルダーにしっかりと向き合う経営が求められます。それぞれ見解に違いがあっても粘り強く対話を続けて、良い解を導けるか。トップの腕の見せどころでしょう。(編集委員 鈴木哲也)
◇ ◇
今回の課題は「立場や意見の違い、どう乗り越えますか?」です。420字程度にまとめた皆さんからの投稿を募集します。締め切りは9日(火)正午です。優れたアイデアをトップが選んで、22日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイト(https://www.nikkei.com/business/future/)で紹介します。投稿は日経電子版で受け付けます。電子版トップページ→ビジネス→未来面とたどり、今回の課題を選んでご応募ください。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。