インドの鉄鋼大手JSW傘下のBPSLが運営するサンバルプル製鉄所

JFEスチールは3日、インド鉄鋼大手JSWスチールの子会社に2700億円出資すると発表した。出資する子会社は高炉を1基運営しており、JFEは輸出に頼らず海外の需要地に生産拠点となる一貫製鉄所を確保することになる。JFEの国内事業は中国発の市況悪化の影響で低迷しており、世界でも数少ない成長市場のインドに活路を見いだす。

出資するのは「Bhushan Power&Steel Limited(BPSL)」で、JSWからBPSLの株式50%を1575億ルピー(約2700億円)で取得する。BPSLは年産450万トンの高炉をインドのオディシャ州に持つ。

JFEは出資を通じて、2030年にBPSLの生産能力を1000万トンに引き上げる計画だ。製鉄所の周辺には空き地もあり、JFEスチールの小川博之副社長は「高炉を新設することも検討している。将来的には1500万トン規模まで拡張することも視野に入れている」と期待する。

JFEが持つ最先端の製造技術もBPSLに投入し、インドで電磁鋼板など高級鋼の製造にも本腰を入れていく。BPSLは自社の鉱山もインド国内に保有しており、安価に鉄鉱石を調達して生産効率を高める狙いもある。

JFEは10年にJSWスチールに出資し、自動車用鋼板などで技術協力を進めてきた。合弁企業を設立して、南部カルナタカ州などでは電磁鋼板の工場建設も始めている。

インドで投資を急ぐ理由は国内事業の低迷だ。JFEホールディングスが11月に発表した25年4〜9月期の連結決算(国際会計基準)で鉄鋼部門の事業損益は53億円の赤字(前年同期は345億円の黒字)に転落した。為替相場が前年より円高に振れ輸出の採算性が下がったほか、中国の過剰生産での市況悪化という構造要因も利益を押し下げた。

インドは粗鋼生産量が足元でも増えているほか、関税で市場も守られ安価な中国鋼材の影響も受けにくい。国内市場が縮小するなか、鉄鋼大手は活路を海外に見いだす。

日本製鉄はインドで欧州アルセロール・ミタルと19年に製鉄大手のエッサール・スチールを7700億円で買収し、AM/NSインディアを立ち上げた。インド西部に持つ製鉄所でも生産能力を年900万トンから1500万トンに増強するため高炉の新設工事を進めているほか、さらなる新製鉄所の立ち上げも計画している。

日鉄は6月には米鉄鋼大手のUSスチールを完全子会社化した。買収金額の約141億ドル(約2兆1000億円)とは別に、28年までにUSスチールを通じて110億ドルの巨額投資を実行する。森高弘副会長兼副社長は「成長は海外でしか望めない」と強調する。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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