和菓子、洋菓子のお土産店を並べて百貨店時代からのニーズを維持する

名古屋鉄道は5日、名鉄一宮駅に直結する商業施設「イチ*ビル」(愛知県一宮市)を開業する。閉店した百貨店をリニューアルし、小売りや飲食などで日常的に利用される施設を目指す。地方で百貨店の閉店が相次ぐなか、地域に根付いた百貨店のブランドを生かしつつ、時代に合わせて業態を転換するモデルケースとなるか注目される。

2024年1月に閉店した名鉄百貨店一宮店をリニューアルした。フロアは地下1階から地上7階で、飲食や物販、クリニックやゲームセンターなどが入る。6階はオフィスも入居する。先行開業した食品スーパーを含め、40店舗が営業を始める。

テナントのジャンルは幅広い。雑貨店のロフトや眼鏡店のZoff、ニトリの系列店など、全国規模の知名度がある店も多い。名鉄が掲げるのは「多用途で便利、毎日立ち寄りたくなる施設」だ。

ロフトなど知名度の高いテナントも多い

日常的な利用客を取り込む核となる食品スーパーのロピアは4階に入る。一般的にスーパーは商業施設の1階に入ることが多いが、名鉄一宮駅の複数ある改札口の1つが4階にあることから、通勤客が使いやすいと見込む。隣接する立体駐車場から直接アクセスできる利便性も打ち出す。

一方で百貨店に求められていた役割も残そうと、1階にはお土産売り場を設置した。「アンリ・シャルパンティエ」や「シーキューブ」「両口屋是清」など人気菓子店が入った。名鉄は「贈答からご褒美まで幅広く対応できる銘柄を選定した。百貨店時代からの顧客ニーズに応えることも意識した」と説明する。

施設内に面影も残した。1階の床タイルはリニューアルせず百貨店から引き続き活用する。百貨店2階の吹き抜けに設置されてシンボルとして親しまれた「マーキュリー像」は、イチ*ビルでは1階の入り口に移設した。

外観は「布が織りなされるイメージ」にリニューアル。地元の繊維産業に着想を得た

一等地から距離のある地方百貨店の閉店は全国で相次いでいる。新型コロナウイルス禍では主要な顧客層の高齢者が外出を控えるなど打撃を受けた。その上、人口減少が進みインターネット通販が普及するという根本的な問題は変わらないままだ。最近では10月に高島屋の洛西店(京都市)、11月には東武宇都宮百貨店大田原店(栃木県大田原市)が来年夏に閉店すると発表している。

名鉄まちづくり推進部企画担当課長の後藤俊幸氏は4日の内覧会で、施設を多用途にすることで「時代の変化とともに変わるニーズに応える」と話した。約20年営業してきた百貨店のレガシーを生かしつつ新しい消費トレンドを取り込めるか、名鉄の対応力が試されている。

(赤堀弘樹)

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