
【シリコンバレー=清水孝輔】米半導体大手マイクロン・テクノロジーは3日、「Crucial(クルーシャル)」のブランドで展開してきた消費者向けのメモリー事業から撤退すると発表した。人工知能(AI)向けの需要の急拡大を受け、データセンター向けのメモリー事業に経営資源を集中する。
2026年2月までに消費者向けメモリーの出荷を終了する。消費者向け事業の従業員に対してほかの事業への配置転換の機会を提供し、事業撤退に伴う影響を減らすと説明している。人員削減の有無は明らかにしていない。
クルーシャルは消費者向けのブランドで、パソコン向けメモリーやデータを保管するソリッド・ステート・ドライブ(SSD)を含む。高い性能を求める個人のゲーム愛好家や映像制作者向けに提供してきた。マイクロンが撤退を決めたことで、個人向けメモリー市場の需給が逼迫して価格上昇を招く可能性がある。
マイクロンはクルーシャルとは別に、パソコンメーカーなど企業向けにメモリーを供給する事業を手がける。今回撤退するのは消費者向けに販売するブランドだけで、企業向けの事業は今後も続ける方針だ。
マイクロンのスミット・サダナ最高事業責任者(CBO)は発表文で「成長が著しい事業部門での大規模な戦略的顧客への供給とサポートを強化するため、消費者向け事業からの撤退という困難な決断を下した」と述べた。
マイクロンはAIのデータの高速処理に不可欠な「広帯域メモリー(HBM)」を手がける。HBMは米エヌビディアなどが手がけるデータセンター向けAI半導体に不可欠で、引き合いが強まっている。
マイクロンは25年6〜8月期にHBMなどのクラウド向けメモリー事業の売上高が前年同期比で約3.1倍に増えた。米テクノロジー大手が巨額資金をAI開発に投じる中で需要が高まっている。クルーシャルの個別の売上高は開示していない。
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