スーパーに並ぶアサヒビールの「スーパードライ」(11月、東京都内)

アサヒビールは10日、11月の売上高の概算が前年同月比2割強減になったと発表した。親会社のアサヒグループホールディングス(GHD)でサイバー攻撃によるシステム障害が発生し、卸や小売りなどが品薄を防ぐために発注を一時的に増やした反動が出た。歳暮などのギフト商品の出荷制限も響いた。

毎月開示していた国内ビール類飲料の販売実績は正確なデータの集計ができないとし、3カ月連続で公表を見送った。これまでは受発注システムが止まったなか、現場では手作業で対応し、10月の売上高は1割弱減にとどまった。10〜11月の2カ月間の累計売上高は1割強減だった。

11月までに出荷を再開している商品の種類は、平常時の売上構成比の8割に相当する。3日からはシステムによる受注を再開し、2026年2月には出荷の正常化を目指す。

アサヒGHD傘下で清涼飲料を扱うアサヒ飲料の11月の売上高は前年同月比2割強減少した。食品事業のアサヒグループ食品は1割程度減った。両社とも12月上旬からシステムによる受注を再開した。

アサヒビールを除く大手3社の11月の実績を独自に集計したところ、国内ビール類飲料の販売数量は7%減だった。アサヒからの代替需要が一服したほか、出荷日が前年同月から1〜2日少なかったことも響いた。ジャンル別ではビールが5%減で、発泡酒や第三のビールを合わせた「エコノミージャンル」は9%減だった。

主要ブランドではキリンビール「一番搾り」が2%減、サッポロビール「黒ラベル」は2%減となった。アサヒの主力「スーパードライ」と同じ価格帯のブランドに代替需要が集まり、市場全体と比べ落ち幅は小さかった。サントリー「プレミアムモルツ」は6%減だった。

企業別ではサッポロが12%減、サントリーが6%減だった。金額ベースで公表しているキリンは1%増だった。10月に発売した新ビール「グッドエール」が好調で、足元の販売数量も25年内の計画(110万ケース、大瓶換算)を上回るペースで推移している。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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