経済対策について語る高市早苗首相。画面には「危機管理投資・成長投資」とある=首相官邸で11月21日、平田明浩撮影
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 11月に閣議決定された経済対策を実行する財源となる2025年度補正予算案が国会で審議されている。一般会計の歳出は18兆3034億円となり、新型コロナウイルス禍後で最大。税収増で費用を賄えず、歳入の6割超は国債を追加発行して補う。政府の大規模な経済対策は、物価高で影響を受ける国民生活への大きな助けとなるか。有権者の経済対策の評価は――。

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農相が提唱するも…

 まずは、高値が続くコメ価格の対策として、鈴木憲和農相が提唱する「おこめ券」についてだ。政府は自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」を拡充したが、その使途として、全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)と全国農業協同組合連合会(JA全農)が発行する「おこめ券」の配布などが想定されている。ただ、既存のおこめ券には使用期限がない。今回の経済対策による「おこめ券」は来年9月末までの使用期限が設けられるため、新規に発行されることになる。

「おこめ券」配布を評価するか
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 だが、毎日新聞が11月に実施した世論調査で「おこめ券」を「評価する」と回答したのは28%で、「評価しない」(53%)を大きく下回った。内閣支持層に限っても「評価する」は38%にとどまり、「評価しない」(44%)を下回る。総じて「人気がない」政策といえよう。

 1枚500円のおこめ券で実際に交換できるのは440円分のコメだ。残りの60円は印刷代や流通経費などに使われ、経費率が高いとの指摘は多い。また、鈴木農相は「JA山形おきたま」からの借入金があり、おこめ券の発行で手数料収入が入るJA側への利益誘導との批判もある。

 ただ、自治体はおこめ券を選ばずに、独自の商品券や電子クーポンを活用することも可能だ。大阪府交野市など、既におこめ券を配布しないと表明する自治体もある。

評価が二分

子ども1人当たり2万円の給付を評価するか
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 経済対策には、子ども1人当たり2万円を所得制限なしで給付することも盛り込まれた。児童手当の仕組みを使って一時的に上乗せして支給される。この給付措置については、「評価する」が40%、「評価しない」が42%と評価が二分された。年代によって評価が違っており、40代までは「評価する」が「評価しない」を上回っているが、50代以上では「評価しない」が逆転する。交流サイト(SNS)上では「子どもがいると本当にお金がかかる」といった投稿の一方、「苦しんでいるのは子育て世代だけじゃない」などの批判も相次ぐ。

 そもそも、自民党は7月の参院選で「国民への一律現金給付」を公約に掲げていた。物価高対策として全国民に一律2万円を給付し、子どもや低所得の大人には2万円を上乗せするという内容だった。しかし、参院選は惨敗。選挙結果を受けて国民への一律給付は断念しつつ、対象を子どもに絞り込んだ形だ。

一律現金給付も消費減税もない

消費減税と国民への一律現金給付が経済対策に盛り込まれなかったことについて
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 参院選では、野党が消費減税を主張して選挙戦の焦点になっていたが、経済対策には消費減税も盛り込まれなかった。

 調査で国民への一律現金給付、消費減税がともに盛り込まれなかったことについてどう思うか尋ねたところ、「妥当だ」(34%)と「妥当とは思わない」(36%)が拮抗(きっこう)。内閣支持層は「妥当だ」が44%で「妥当とは思わない」(27%)を上回ったが、不支持層では「妥当とは思わない」が68%を占め、「妥当だ」(17%)を大きく上回った。理由を書いてもらった自由記述欄では、財源などの問題から「現実的だ」とする意見と、一律の現金給付や消費減税を求める声が交錯した。

ガソリンの暫定税率廃止は?

ガソリンの暫定税率廃止を評価するか
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 評価が高いのはガソリンの暫定税率廃止だ。ガソリン税の暫定税率は1974年に導入。1リットル当たり約25円上乗せされていたが、12月31日に廃止される。調査では「評価する」が68%に上り、「評価しない」は14%にとどまった。近年、市場価格が高騰しており、廃止を望んでいた有権者は多かったようだ。

 しかしながら、代替財源の確保はめどが立っておらず、今後の財政悪化の懸念は強い。また、暫定税率の廃止は、石破茂前政権下で自民、立憲民主など与野党6党が合意していたものであり、高市早苗政権の独自政策とはいい難いだろう。

 借金である国債の追加発行に財源を依存する今回の経済対策。ガソリン税の暫定税率廃止を除き、有権者による「評価」が伸び悩む政策が少なくないように見える。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は功を奏するか。高市首相の手腕が試される。【野原大輔】

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