取材に答える三菱重工業の伊藤栄作社長(15日、東京都千代田区)

三菱重工業の伊藤栄作社長は15日、日本経済新聞などの取材に答え造船事業で「既に増産に着手している」と明らかにした。政府は官民合わせて1兆円の投資を実現する基金などを通じ建造量を2倍に増やす目標を掲げる。伊藤社長は「政府方針とは別に増産計画を進めていた。まずは自社の計画を実現していく」とし、建造量倍増のための投資は考えていないとした。

伊藤社長は政府の造船振興策について「国としてそうした方針を打ち出だされたことはありがたい」とした上で、同社は24年ごろから工場の自動化や製造プロセスの改善による増産、リードタイムの短縮に取り組んでいると述べた。

三菱重工は2022年に主力拠点で液化天然ガス(LNG)運搬船などを建造していた香焼工場(長崎市)の新造船エリアを、大島造船所(長崎県西海市)に引き渡した。現在は液化二酸化炭素(CO2)運搬船など次世代船の開発、艦艇など官公庁船の建造を主力とする。

伊藤社長は「もう1回大きな船をつくることは考えていない」とした上で「防衛と商船でも設計手法などはなるべく共通にしていく考え方がより重要になる」と述べ、デュアルユース(軍民両用)を進めていく考えを示した。

三菱重工はオーストラリア海軍が導入を決めた「もがみ」型護衛艦改良型の建造を手掛ける。韓国造船大手ハンファグループが現地で建造を担う有力候補とされる造船所の筆頭株主となることについて、伊藤社長は「契約に向けた準備を進めている。細かないコメントは差し控えたい」とした。

10月のトランプ米大統領来日に合わせ公表された「日米間の投資に関する対米ファクトシート」で、関与が検討される企業の一つとして社名が挙がったことについては「社名が出た経緯や詳細は分からない。投資については従来の案件とスタンスを変えず、技術的、商務的条件を確認しながら進めていきたい」と述べるにとどめた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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