「地域商社」構想を発表した(左から)井筒屋の松本圭社長、北九州市の武内和久市長、北九州商工会議所の野畑昭彦副会頭=北九州市役所で2025年11月25日午後1時37分、橋本勝利撮影
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 百貨店の井筒屋(北九州市)は地域産品の販路拡大に向け、北九州市、北九州商工会議所と「地域商社」を作るために連携すると発表した。百貨店の知見を共有し、官民一体で新商品開発や既存品のPRを進め、「地域の稼ぐ力」につなげたい考えだ。

 連携の基本合意によると、井筒屋は小売りや流通、販売促進のノウハウや試験販売の場を提供するほか、バイヤーやユーザー目線で商品開発を支援をする。市は補助金による支援や関係機関との調整役となり、商議所は地元事業者との橋渡しや事業者からの意見収集など伴走支援に取り組む。

 井筒屋は創業90周年を迎えた2025年度から3カ年の中期経営計画で、「地域商社」の構想を掲げた。地域商品の開発担当部門を新設し、地元の老舗企業3社との共同開発に着手している。

「赤い冒険シリーズ」のトマトを原料にした調味料=北九州市小倉北区で2025年10月29日午前11時47分、橋本勝利撮影
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 第1弾として、北九州産のトマトを使った「赤い冒険シリーズ」の販売を開始。大福やおでん、調味料などを取りそろえ、「赤の輝き、食卓を彩る」のキャッチコピーで、お歳暮商戦に参入した。

 11月下旬に市役所で開かれた共同記者会見で、北九州市の武内和久市長は「地域には眠っているダイヤの原石のような商品があり、大きな可能性がある。井筒屋のノウハウを生かし、国内外に売り出したい」と期待した。北九州商工会議所の野畑昭彦副会頭も「地元の中小企業、生産者が新たな挑戦に踏み出せる環境を整え、地域経済の底上げを図る」と支援を約束した。

 井筒屋の松本圭社長は「地域の百貨店として地元に貢献したいという思いが構想の始まり。百貨店には分野ごとにバイヤーがいるので、各企業の優れた技術を使って付加価値の高い商品を生み出したい」と意気込みを語った。

 同様の取り組みは、全国的に地銀なども参入して広がりを見せている。一方、少量多品種の商品を扱うため、在庫管理や採算確保が難しい面もあり、効率化と地場産品の独自性が成功の鍵を握る。

 松本社長は「ものづくりの街、メード・イン・北九州として認識してもらいたい」と強調。「購入者の意見を集約し、地域商社の事業だけで成り立つくらいのものにしていきたい」と新たな収入源の確保に意欲を見せた。【橋本勝利】

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