イベントに登壇したオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(11日、米サンフランシスコ)

【シリコンバレー=山田遼太郎】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は18日、米オープンAIが最大1000億ドル(約15兆5000億円)の資金調達を目指して投資家と協議を始めたと報じた。満額の調達に成功すれば企業価値が8300億ドル(約130兆円)に達する可能性があるという。

調達額を含めた企業価値は、現在の評価額の5000億ドルから6割以上増える計算となる。交渉は初期段階で、調達額や企業価値は変わる可能性がある。早ければ2026年3月をめどに資金調達を完了する計画だという。

資金需要の大きさから、中東などの政府系ファンドの出資を募る可能性が報じられている。過去には24年にアラブ首長国連邦(UAE)の投資会社MGXから出資を受けた。

オープンAIは米アマゾン・ドット・コムから100億ドルの投資を受ける協議中だと16日に報じられた。9月には米半導体大手エヌビディアから最大1000億ドルの投資を受けると発表した。アマゾンやエヌビディアが今回の資金調達にどう関与するかは明らかになっていない。

オープンAIはより高度な人工知能(AI)の開発を進めるため、ソフトバンクグループ(SBG)と組む「スターゲート」計画で米国のAIインフラに総額5000億ドルを投資する。AI向けのクラウドサービスや半導体の調達で、33年までに1兆4000億ドルを充てる計画だ。

25年末時点の年換算売上高は200億ドルと急増している。ただ、支出の増加ペースが収益成長を上回り、損益は大幅な赤字が続く。AI開発への先行投資を続けるためには外部から巨額の資金を集め続ける必要がある。

オープンAIは10月、27年にも1兆ドル規模の時価総額で米株式市場に新規株式公開(IPO)を目指していると報じられた。

オープンAIは3月にSBGが主導する400億ドルの資金調達を発表した。当時の企業価値は3000億ドルと評価されていた。新たな資金調達が成功すればSBGの会計上の含み益は増える。SBGは25年内に、オープンAIへの225億ドルの追加出資を完了する予定だ。

足元でオープンAIには逆風が生じている。米金融市場ではAIインフラへの過剰投資に警戒が強まり、オープンAIと組む米オラクルの株価は9月の高値から4割強下落した。競合の米グーグルもAIの性能を高め、オープンAIを追い上げる。オープンAIは逆風下でも大型の資金調達をこなせるかが試される。

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