トランプ政権との日米関税交渉で合意した、米国からの輸入車の審査手続きの簡素化に向け、国土交通省は19日から関係省令の改正案のパブリックコメントを始める。現状は米国の安全基準を満たしても、日本国内で追加試験が必要だが、輸入車の車種ごとの機能を踏まえ、国交省側が個別に安全性を判断し、大臣特例で書類審査のみで輸入できるようにする。来年1月下旬をめどに改正省令を施行する。
自動車の輸入を巡っては、日本は欧州などとは安全基準に関する試験項目を共通化し、審査を簡略化する。一方、米国は独自基準を設け、日本基準に足りない衝突や排ガスなどの試験項目について、日本側で再び試験をやり直す必要があった。
トランプ大統領がやり玉に挙げていた「ボウリング玉試験」もその一つだ。正式名称は「歩行者頭部保護性能試験」で、約2メートルの高さから3.5~4.5キロの半球体を時速35キロでボンネットにぶつける。車と衝突した歩行者の頭部を守るため、ボンネットに一定の軟らかさを求めるためだ。
この追加試験について、トランプ大統領は米国車販売の「非関税障壁」になっていると批判。政府は規制を緩和する検討を進め、9月の日米の共同声明で、「米国で製造され、かつ、米国で安全が認証された乗用車について、日本国内での販売のため追加試験なしで受け入れ」と明記された。
政府関係者によると、新たな制度では「米国で製作された自動車」を対象に、日本基準で必要な試験が未実施でも、米国内での試験結果を書類で提示してもらうなどして安全性が確保されていれば、追加試験を免除する仕組みになるとみられる。車種ごとに備わる機能を踏まえ、国交省側が個別に安全性を判断する。
例えば、米フォード製のピックアップトラック「F150」の場合、「ボウリング玉試験」は行っていない。ただ、歩行者などへの自動緊急ブレーキなどが搭載され、歩行者との衝突の危険性が低く安全性が確保されていると国交省側が判断されれば、試験は免除されることになる。
今回の手続きの簡素化によって、輸入はしやすくなる半面、安全面の担保が課題となる。
トヨタ自動車は19日、米国工場で生産したセダン「カムリ」、SUV(スポーツ用多目的車)「ハイランダー」、ピックアップトラック「タンドラ」の3車種について、日本に輸入して販売すると発表した。国交省の審査の簡略化を活用し、2026年前半から順次、売り出す。
価格はいずれも未定という。現在、3車種とも国内では販売していないため、消費者の選択肢が増える。一方、米国から日本への輸送費に加え、労務費の高騰もあり、価格設定が課題となる。
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