塩野義製薬は22日、田辺ファーマからALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬「ラジカヴァ(日本での製品名はラジカット)」事業を買収すると発表した。日米を含む世界での知的財産や販売権を取得する。買収の対価は25億ドル(約3900億円)で、将来の売り上げに応じてロイヤルティーを支払う。

買収対象となる事業の年間売上高は1000億円を超える規模という。塩野義は2027年3月期以降、連結業績への継続的な収益貢献を見込む。31年3月期に売上収益8000億円(25年3月期は4382億円)を掲げており、目標達成に近づく。

買収の手続きとして、まず田辺ファーマの米国子会社が「ラジカヴァ」事業を担う新会社を設立する。塩野義の米国子会社が26年4月以降に、その全株式を取得する。日本を含む米国以外の市場についても、流通網や製造販売承認の承継を進める。

塩野義は生活の質(QOL)が低下する疾患領域を、感染症に続く成長分野として位置づける。ALSのほか遺伝性の知能障害や、筋肉細胞にグリコーゲンがたまり筋力低下を起こす病気など、患者数が少なく有効な治療法に乏しい希少疾患を重点領域とする。

今回の買収により、塩野義は米国で希少疾患に精通した営業人材や販売体制を取得する。自社開発の希少疾患治療薬についても、米国での上市後に速やかに販売拡大につなげる。

田辺ファーマは今回の譲渡により財務基盤を強化し、日本市場向けの新たな治療薬候補の獲得や育成に充てる方針だ。

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