V6ターボエンジン「GT-R」とは

1970年代に「ハコスカ」や「ケンメリ」の愛称で呼ばれた「スカイライン」のスポーツモデル「スカイラインGT-R」。

80年代から90年代にかけて新しいモデルが発表された後、その後継車種として当時のCEOだったカルロス・ゴーン氏のもとで開発がスタートし、2007年に登場したのが「GT-R」です。

強力なV6ターボエンジンと四輪駆動により、日常での移動だけでなく、サーキットでも高い性能を発揮しました。

エンジンは「匠」と呼ばれる職人が1基ずつ手作業で組み立て、日産のフラッグシップモデルとして世界的な人気を集めました。

これまでにおよそ4万8000台が生産され、国内では1万7000台余りが販売されています。

しかし、騒音や環境、安全に関わる規制などの厳格化によって新たな設計や部品が必要となり、開発コストが膨らみます。

これにともなって販売価格も上がり、登場時は最も安いグレードで税込み777万円でしたが、現行モデルは最も安いグレードでも1444万円と、当時の1.8倍以上となっています。

こうした中、環境や安全に関わる規制などの厳格化に対応するための開発コストが膨らんだり、部品の調達も難しくなったことから日産は生産を終えることを決め、18年間の歴史に幕を閉じることになりました。

8月26日、栃木県の工場で最後の1台が完成し、生産ラインから出てきた車を開発者などが出迎えました。

エスピノーサ社長 「決して消えない足跡を残した」

合わせて開かれた式典でイヴァン・エスピノーサ社長は、ビデオメッセージの中で「GT-Rが自動車産業に決して消えない足跡を残したことに疑問の余地はない。いつか復活させることがわれわれの目標だ」と述べました。

開発担当者「新しいDNA持ったGT-Rの復活を期待」

20年以上にわたって開発に携わってきた担当者の松本光貴さんは「開発費をかけたとしても、お客様が手ごろな価格で購入できるのかということがあり、生産終了を決断せざるを得なかった。今、日産は厳しい状況ではあるが、次の世代の人間が新しいDNAを持ったGT-Rを復活させることを期待している」と話していました。

経営再建中の日産は、先月発表した、ことし4月からの6月までの決算でも最終的な損益が1157億円余りの赤字となっていて、販売台数の回復に向けた商品力の強化が大きな課題となっています。

スポーツカーの開発環境 厳しさ増す

専門家はメーカーにとってスポーツカーの開発環境は厳しさを増していると指摘します。

自動車業界に詳しい三菱総合研究所の杉浦孝明主席研究員は「環境関連の規制のほか、安全装備やセキュリティー対策などへの対応が開発コストを押し上げる要因になっている。大規模な開発投資が難しくなる中で、次の開発ステップを断念せざるをえないケースが出てきている」と話しています。

一方で、車を購入する消費者の動向については「子育て世代は使い勝手を重視して、ミニバンやSUV、3列シートの車などが人気だ。ニーズの画一化が進み、スタイルや走りよりは現実的な使い勝手を重視する人が増えてきているかもしれない」という見方を示しました。

そのうえで、杉浦さんは「開発や経営の合理化でスポーツカーが失われてしまうのは多様性の面からいうと残念なことで、いろんな車種が世の中に存在することがマーケットの大きさや魅力につながる」と話していました。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。