経済産業省や国土交通省は24日までに三菱商事連合が計画していた洋上風力発電事業について、撤退要因を分析した資料を公開した。資材高や円安などの影響があったとしつつも「安価な供給価格も本件事業撤退を招く一因となった側面は否定できない」とし、安値落札により採算の確保が難しくなったとの見方を示した。
三菱商事や中部電力子会社のシーテック(名古屋市)などが2021年末、政府の大規模公募第1弾で秋田県沖など3海域の洋上風力を落札した。他連合より大幅に安い価格で「総取り」していたが、25年8月末に事業から撤退すると表明した。経産省などは9月から内容を非公開とした上で、三菱商事へのヒアリングや撤退要因の分析を進めてきた。
三菱商事連合は落札後のインフレや円安による風車価格の高騰などを理由に挙げてきた。資料ではインフレの影響などを認め、政府が議論していた追加の補助制度を踏まえても「コスト増加を賄うだけの収入を確保できる見込みが立たなかった」とした。
ただ他連合より大幅に安かった落札価格が撤退につながった可能性は排除しなかった。落札後の調査で従来の工事計画の変更が必要になっていたことも認め、撤退の要因になった可能性を指摘した。「事業計画の実現性やリスクへの対応において精緻な評価が不十分だった可能性がある」など制度や計画の評価体制の課題にも触れた。
三菱商事が守秘義務を理由に、項目別のコスト増の要因などで具体的なデータの開示をしなかったことも指摘した。撤退となった3海域は再公募で新たな事業者を決める予定で、三菱商事は地盤などの調査データを提供する方針を示している。
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