子宮頸がんのリスクを判定する専用キット
ユニ・チャームが女性の体調管理を後押しするウエルネス事業を広げている。生理時の鉄分不足を可視化するキットや、睡眠不調を和らげるパジャマを投入。経血を用いた子宮頸(けい)がんリスク判定サービスの実証実験にも乗り出した。生理ケアだけにとどまらず、女性特有の不調をケアする商品やサービスの展開を加速している。

1日に発売した「ソフィ 経血で鉄不足チェックできるキット」は、生理用ナプキンに重ねて使い、経血中の「貯蔵鉄」を検知する仕組みだ。

シートに経血が触れると線が1本または2本で現れる。1本のみの場合は鉄不足の可能性を示す。公式オンラインサイトで4枚入り1089円で販売する。

女性は月経により鉄を失いやすい。厚生労働省の調査では20〜40代女性の約65%が貧血または「隠れ貧血」と推定される。一方、同社調査では朝から「だるい」と感じる女性が約8割に上るのに対し、原因として鉄不足を自覚する人は2割強にとどまった。

経血で鉄分不足チェックできるキット

経血中の貯蔵鉄濃度を調べるシート構造は国内初で特許申請中だ。1回の生理期間で2枚の使用を想定する。グローバルフェミニンケアマーケティング本部長代理の長井千香子氏は「月経を健康管理の出発点ととらえ、不調の背景にある鉄不足に気づくきっかけにしてほしい」と話す。

女性のウエルネスに着目したビジネスは広がっている。調査会社グローバルインフォメーションによると、女性の月経や不妊症、更年期障害などに焦点を当てた市場は2025年に49億ドル(約7700億円)を占め、32年には82億ドルに達する見込み。

ユニ・チャームは24年10月、「ソフィ」を生理用品ブランドからウエルネスケアブランドに転換すると発表した。生理用品単体では成長が限られる中、女性の体調管理などに広げることで新しい収益の柱に育てていく考えだ。

筑波大学発スタートアップのiLAC(アイラック)とは、生理用品の吸収技術を応用したHPV(ヒトパピローマウイルス)検査サービス「ソフィ FemScan(フェムスキャン)」の共同開発に乗り出した。

26年中に専用キットの発売を目指す。生理中の経血を専用パッドに採取し、シートに転写して郵送するだけで感染の有無を調べられる。結果はアプリで知らせる。

従来のHPV検査は医師が子宮内部を直接ブラシでこすって細胞を採取する必要があり、痛みや不快感などが受診の壁となっていた。ユニ・チャームが実施した調査では、婦人科受診のハードルとして「痛みへの不安」を挙げた女性が4割を超えた。

経血の活用で検査ができれば心理的負担の軽減につながる。アイラックはすでに数十例で医療機関の検査と同等の精度を確認。今後実証例を1000例規模に広げる。将来的にはホルモンバランスや婦人科疾患など、経血由来データの応用も視野に入れる。

着るだけで疲労回復などを促す「ソフィBe 超熟睡パジャマ」

生理時の睡眠不調に着目したパジャマも11月に発売した。身体の熱や外光を吸収・放射する特殊繊維を採用し、着るだけで血行促進や疲労回復を助けるという。

袖や裾を背面で絞った構造で家事や化粧時でも動きやすく、腹部を温めるデザインも施した。ネイビーとピンクの2色をそろえる。同社によると、月経周期に伴うホルモン変動で深部体温が上がり、血流も低下することで、睡眠の質が落ちやすい。

長井氏は「生理や体調変化に伴う悩みの解決につながる商品やサービスを広げる。女性が一生を通じて潜在力を引き出せるよう後押ししたい」と話す。

(西山良太)

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