看護師らへ時間外勤務手当(残業代)が支払われていなかったとして、名古屋鉄道健康保険組合が経営する名鉄病院(名古屋市西区)が名古屋西労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが、病院などへの取材でわかった。病院は過去3年分の残業代を支払う方針で、医師を除く全職員に29日までの申告を求めている。調査は年明けから始める。
病院によると、6月に労基署の監査を受け、主に看護師で、手書きの勤務報告書と電子カルテのログ記録などに相違があることが判明。労働時間を別に管理されている医師約80人を除いた全職員約650人について、5~6月の1カ月間の勤務実態を確認するよう指導されたという。
病院は職員に聞き取り調査をし、9月下旬、判明した残業代を約50人に支払った。1人平均1万円程度だったという。労基署からは10月10日付で、是正済みと書かれた是正勧告書を受け取った。
勤務報告書には予定された勤務時間が記載されているが、残業した職員はこれを書き直して押印し、職場長ら責任者も押印することになっている。不払いとなった主な原因は、職員の記入漏れだったという。病院は「手書きでの管理が問題だった」とし、2026年度に向け、手書きの勤務報告書を廃止し、ICカードとシステムでの管理に切り替える。
また、病院は名古屋鉄道本社と協議し、11月28日になって「全ての職員の不利益を完全に解消する」と通知を出し、全職員を対象に22年5月11日~25年5月10日の残業について、今月29日までに申告するよう求めた。関係者によると、本社の法務・コンプライアンス部に11月上旬、過去の残業調査を求める匿名の相談があり、事態を把握した本社側が決めたという。
病院は、職員への通知で「上司の指示なく始業時刻前に業務を始めた」「研究活動・自己研鑽(けんさん)」などを勤務時間に認めない可能性も示していて、職員の申告がどれだけ認められるかは不透明だ。
名鉄病院はHCU(高度治療室)など計373床で、29の診療科がある。病院の年報によると、25年4月1日現在の職員数は740人。
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