日銀は29日、政策金利の引き上げを決めた今月の金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。「着実な利上げが望ましい」など、来年以降も経済と物価の情勢を見極めながら、追加利上げが必要とする意見が複数上がっていたことが明らかになった。
日銀は18、19日に開いた会合で、政策金利を0・5%程度から0・75%程度に引き上げることを全員一致で決めた。
委員からは金利水準について、利上げ後も「引き続き、経済を強力にサポートする金利水準、金融緩和の度合いにある」との意見が出ていた。別の委員は、日銀の利上げが遅れて物価高の制御や経済の安定が難しくなる恐れを懸念し、「着実な利上げが望ましい」と指摘した。
金利水準が景気を熱しも冷ましもしない「中立金利」についても意見が出た。理論的には、中立金利に達するまで日銀が利上げを続けることになるが、ある委員は中立金利まで「まだかなりの距離がある」とし、今後の利上げペースについて「当面は数カ月に1回のペース」で利上げすべきだとした。
また、財政拡張路線の高市早苗政権の発足以降進んでいる円安・ドル高と長期金利の上昇に対しては「政策金利が低すぎることが影響している面がある」との意見もあった。
別の委員は「為替の物価に与える影響などを踏まえると、このままの金融環境では物価上昇圧力が持続するため、次回会合を待つリスクは大きい」と指摘しており、円安による物価上昇への懸念も利上げ判断の材料になったことがうかがえる。
19日の植田和男総裁の記者会見後には、来年以降の追加利上げの速度や幅を示唆する発言がなかったことで円安が進行したが、主な意見では委員らから追加利上げに積極的な発言が複数盛り込まれていたことから、公表後にやや円高が進んだ。【古屋敷尚子】
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