ライオン社長 竹森征之氏
ライオンは主力のオーラルヘルスケア事業で、2026年以降に高価格帯商品の投入を本格化する。歯磨き粉に加え、歯ブラシや洗口液など周辺商品でも付加価値を高める。中低価格帯を主戦場としてきた戦略を見直し、人口減と高齢化を背景に広がる高価格帯市場に本格参入する。組織体制も1月から部門の壁を取り払い、研究から営業まで一体で進める形に改める。竹森征之社長に戦略を聞いた。 竹森征之氏(たけもり・まさゆき) 1993年(平5年)中央大商卒、ライオン入社。2022年上席執行役員。23年社長、24年社長最高経営責任者(CEO)。千葉県出身。55歳

――歯磨き粉などのオーラルヘルスケア事業の現状は。

「(500円以上の)高価格帯ではメーカーとして市場に十分届いていないという反省がある。(英ヘイリオンの)『シュミテクト』など競合が高価格帯で存在感を示す一方、当社は『クリニカ』『システマ』などで30〜40%の高いシェアを持ち、中価格帯が主力だ。結果として高価格帯への対応は手薄だった」

――26年はどんな手を打ちますか。

「高価格帯の商品の展開を加速させる。2000円を超える『デントヘルス薬用ハミガキDXプレミアム』など、金額ベースで市場成長を上回る商品が出てきている。これを起点に、システマやクリニカなど既存ブランドで歯ブラシや洗口液といった周辺カテゴリーにも展開する。高齢化が進む中、健康のためなら価格が高くても価値ある商品を選ぶ層が広がっている」

――高価格帯で重視する付加価値とは何ですか。

「かむ、飲み込む、話すといった口腔(こうくう)機能まで含めて支えることが重要だ。口の中を清潔にする段階から、口を通じた健康サポートへ価値が広がっている。25年に歯科医院向けに発売した口腔内細菌叢(そう)のコントロールに着目した歯磨き『システマ SP-T ジェル プラス』はその象徴だ」

――組織も見直しました。

「研究開発も生産やマーケティング、営業まで見据えて進めるのがあるべき姿だが、部門間の見えない壁があった。先行した打ち手を生み出しにくい構造になっていた」

――具体的に何が変わるのでしょうか。

「仕事の仕方や業務のプロセスを大きく変える。研究、調達、生産、マーケティング、営業といった機能別の壁をなくし、初期段階から関係者が一体で議論できる体制にする。開発から事業化までを分断せず、全体最適で考える」

――25年は「稼ぐ力の強靱(きょうじん)化」を掲げました。

「稼ぐ力の基礎的な体力が着実についてきた。特に国内の消費財の収益性が改善した。SKU(商品の最小管理単位)削減や物流の効率化などはあくまで手段だ。マージンが確保できるSKUにフォーカスして、それを顧客に届けるという当たり前の活動を徹底してきた。その結果、1SKU当たりの売り上げや利益が上がっている」

――洗剤などの事業はどう立て直しますか。

「海外と日本で戦い方を分ける。東南アジアなどでは粉末から液体への転換で付加価値と収益性を高める。日本では『ストロングニッチ』を目指す。シェア1位ではないが、究極に差異化された製品だ。水を使わない、時短、環境配慮といった価値で定番から外れない商品を育てる」

――日中関係悪化の影響はありますか。

「足元では現地は冷静でオーラルヘルスケアの販売動向は悪くない。出荷がやや抑制されているのは中国経済の鈍化や流通見直しの影響が大きい。中国で成長を追求しつつ、アジアで分散を進める」

記者の目 アジア市場、シェアは1桁

ライオンの収益体質が改善している。歯磨き粉など優位性のある分野に経営資源を集中し、価格競争を避けている。2025年1〜9月期の連結売上高(国際会計基準)は前年同期比1%増の3049億円、純利益が同64%増の208億円と同期間で5年ぶりの高水準となった。けん引役が歯磨き粉や歯ブラシなどの「オーラルヘルスケア事業」だ。かむ力や飲み込む力にも着目、セルフケア製品にとどまらず歯科医向けの高価格帯市場も開拓する。25年は歯磨き粉などの高付加価値化による実質上の値上げを実施した。26年もこれは継続する。

英ユーロモニターによると、販売ベースで24年の国内オーラルケア市場でライオングループのシェアは24.8%で首位だった。一方、アジア市場では1桁のシェアにとどまる。(徐潮、西山良太、藤田このり)

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