ソニーグループ傘下の米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)は15日、自社制作する映画を劇場公開後、米ネットフリックスで世界独占配信すると発表した。コンテンツ流通におけるネットフリックスの存在感が高まっていることを受け、複数の配信プラットフォームを使い分けていたソニーGの戦略に変化が生じている。

契約期間は2032年まで。26年後半から段階的に配信を始め、29年初めに全世界で配信する計画だ。実写版「ゼルダの伝説」や「スパイダーマン:スパイダーバース」、「ナイチンゲール」などが対象になる。映画「鬼滅の刃」はソニーグループのアニプレックスなどが手掛けているため、今回の契約の対象にならない。

契約金額は明らかにしていない。独占配信期間は劇場公開などの終了後、18カ月間程度になる見込みで、ネットフリックスの独占配信終了後には米ウォルト・ディズニーに配信権が移る。

今回の契約は、21年に米国とドイツ、東南アジアなどを対象に結んでいた契約を全世界に拡大する内容だ。SPEは「ネットフリックスとのパートナーシップは非常に価値のあるものだった」としており、米国などの地域で作品価値の向上が確認できたことから全世界に対象を広げる。

SPEはこれまで作品ごとに複数の配信プラットフォーマーのなかから最も条件の良い相手と契約を結ぶのが基本戦略だった。近年は、ドラマやクイズ番組を放送局や動画配信向けに制作したり、リメークを含めて二次販売したりする「番組制作部門」を新たな収益源に育てている。

ネットフリックスへの独占配信は映画限定とはいえ、同社を他のプラットフォーマーより優先する姿勢を鮮明にする。従来方針の転換点となる可能性がある。

ネットフリックスへの傾斜を強める背景には、日本やアジアなどでハリウッド映画が劇場上映枠を確保しづらくなっていることもありそうだ。

近年、劇場映画は地産地消化が進みハリウッド映画の存在感は相対的に低下している。日本でも25年、鬼滅の刃の最新作や「国宝」に押され、米アップルが制作し米国などで評価が高かった「F1/エフワン」が上映枠を圧迫された。

一方、長期間にわたってサブスクリプション契約者が自由な時間に視聴できる配信プラットフォームでの配信は、劇場での興行収入がふるわなかった作品が再評価されるきっかけになる。

その点、ネットフリックスは世界190カ国・地域に3億人以上の有料会員を持ち、認知度を高めやすい。米ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの買収にも合意しており、買収が実現した場合、視聴者への訴求力は一層高まる。

22年ごろはソニーGが上回ることもあった株式時価総額は足元で2倍以上の差を付けられるまでになった。強いコンテンツのネットフリックスへの集中が続けば、同社とコンテンツ供給者との力関係がさらに変わる可能性もある。

(吉田啓悟)

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