日本酒などの「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されて1年が過ぎた。今後の技術継承が課題になる中、日本酒造杜氏(とうじ)組合連合会(日杜連)の石川達也会長(62)が今春、後進育成のため新たなスタートを切る。古里であり、銘醸地として知られる東広島市西条地区の酒造会社の杜氏として、酒は江戸時代に発達した「生酛(きもと)造り」という伝統的な技術で醸し、人材研修事業も視野に入れる。
石川さんは元プロ野球選手の松井秀喜さんやチリ・イースター島のモアイ像に似ていることから、業界では「酒ゴジラ」「酒モアイ」の愛称で知られ、現在日杜連会長など業界の要職のほか、茨城県大洗町の月の井酒造店の杜氏を務めている。
生酛造りへの造詣が深く、数年前から西条地区にある白牡丹酒造の要請で生酛の技術指導をしていたことなどから、同じ地区内にある福美人酒造の杜氏として就任することになった。
福美人酒造は昭和期には「西条酒造学校」とも称されるほど、全国各地から酒造関係者が学びに訪れていた。石川さんに杜氏就任をオファーした福美人酒造の島治正社長(60)は、白牡丹酒造の社長でもある。島社長は「福美人酒造の方は近年細々と酒を出していたが、今後を考えて決断した。酒どころの西条を盛り上げていければ」と話す。
石川さんは今春、西条に帰り本格的な準備に入る。福美人酒造が酒蔵を改装し、10月の酒造り開始を目指している。将来的には他社の人材を受け入れ、研修事業の展開も見据える。石川さんは「このチャレンジを通じて、少しでも地元や酒に恩返しができるよう頑張りたい」と意気込んでいる。
生酛造りは江戸時代に発達した方法で、アルコール発酵を担う酵母菌がスムーズに活動できるよう、乳酸菌などの力で酵母菌の妨げになる菌が繁殖できない環境を整える。現在の主流である、乳酸そのものを添加する造りに比べて時間も手間もかかるが、味わいに幅や奥行きが出る。【植田憲尚】
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