東京大学の中村栄一特任教授らは、ナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微小な人工ダイヤモンドを合成する手法を開発した。炭素材料に電子を当てると炭素の骨格がつながり、微小なダイヤモンドになる。感度が高い「量子センサー」などを作る技術の基盤になる可能性がある。研究成果は米科学誌「サイエンス」に掲載された。

合成したナノダイヤモンドの電子顕微鏡写真=中村特任教授提供

人工ダイヤは非常に硬い素材で生体にも安全なため、次世代の素材として注目されている。特にナノサイズの人工ダイヤは、超高感度の量子センサーや薬を狙った場所に運ぶ「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」向けの材料に使える可能性がある。

ただ人工ダイヤの合成には黒鉛などの炭素源に、セ氏1000度を超える温度と数万気圧の圧力をかける必要がある。合成に莫大なエネルギーが必要で、微小な人工ダイヤの形や大きさを精密に制御して作るのは難しい。

研究グループは炭素10個で環状の構造をとる「アダマンタン」という有機材料を使った。材料の結晶に真空状態で電子線を当てると炭素と水素の結合の一部が変化して炭素結合をつくる。多数の結合がつながり、球形の人工ダイヤができた。

電子線を数秒当てれば直径が数ナノメートルの球形の人工ダイヤになり、照射する量や時間を変えれば大きさを調整できる。室温や常圧でも合成できる。今後、多量のナノダイヤを合成する手法の開発を目指す。

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