2012年に経営破綻し、多角化を進めていた=AP

【シリコンバレー=渡辺直樹】米イーストマン・コダックが経営危機に陥っている。かつて写真フィルムとカメラで世界を席巻した約130年の歴史を持つ老舗は、2012年に経営破綻している。再生後は商業印刷や先端素材へと軸足を移したが、11日付の決算資料で資金繰り懸念を表明した。

コダックが11日に発表した4〜6月期決算は最終損益が2600万ドル(約38億円)の赤字だった。約5億ドルの債務返却の資金調達に懸念があるとして、開示資料のなかで投資家に注意を促す「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記」を記載した。

同社は債務の借り換えや、退職年金制度の廃止による年金資産の取り崩しなどで資金をまかなうとしている。株式市場では先行き懸念が強まり、株価は決算発表前の直近高値から2割超下落した。

コダックは創業者のジョージ・イーストマンが1880年代に写真材料の特許を取得したことに端を発する。「写真フィルムの巨人」として民生用カメラとともに世界市場を席巻した。1990年代のデジタル化に対応できず、2012年に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を適用した。

カメラ製造からも撤退し、13年に再上場して以降は商業印刷機器や高機能フィルムなどを主力としている。直近では医薬原料にも進出した。ただ、かつてのライバルだった富士フイルムホールディングスがヘルスケアや半導体材料に主力事業を大胆に転換したのに比べると、多角化は進んでいなかった。

コダックは日本市場では印刷機器やプロ向けの写真・映画用フィルムを販売している。経営不振が長引けば、取引先の商業印刷業界に影響する可能性がある。

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