既存工場に隣接する場所に変圧器の新工場を建設する(米国バージニア州)

日立製作所は5日、米国に10億ドル(約1500億円)超を投資すると発表した。バージニア州の既存拠点の隣接地に電力変圧器の工場を新設する。各地の既存工場の増強も実施する。現地で新設計画が相次ぐ人工知能(AI)向けデータセンター(DC)などに設備を供給する。

日立は2027年までに送配電設備に世界で90億ドル超を投資すると表明している。トランプ関税の影響が想定される米国でも生産能力拡充を急ぐ。

送配電設備子会社の日立エナジーを通じて投資する。10億ドルのうち4億5700万ドルを投じ、バージニア州に大型電力用変圧器の工場を新設する。新工場は既存拠点に隣接する場所に建て、27年末までの稼働を目指す。製造やエンジニアリングなどの職種として825人以上を新規雇用する。

変圧器は日立グループが手掛ける主要な送配電設備の一つだ。火力や原子力などの発電所や変電所、工場、DCなどに設置して電圧を制御する。米国では生成AIの学習や利用に向けたDCの新設が相次いでいる。サーバーを安定稼働させるための電力インフラの需要が急激に高まっている。

バージニア州の新工場以外に、ペンシルベニア州やテネシー州などの既存工場の増強に残りの投資を振り向ける。変圧器や高電圧機器などの設備を生産する。一連の投資により、日立は米国で数千人を新たに雇用する。

米国ではすでに現地生産を進めており、日立エナジーの現地生産比率は8割ほどになった。日立は26年3月期、トランプ関税により調整後EBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)で300億円、純利益で350億円程度が全社業績の下押し要因になると見込んでいる。新工場の建設などで「地産地消」をさらに進め、関税影響を軽減する。

日立エナジーは20年から27年にかけて、グローバルで90億ドル超を投資する方針を示している。DC新設や再生可能エネルギーの導入が世界的に増えており、送配電設備に対する需要は高い。米国以外では、スウェーデンやフィンランド、ドイツ、インドなどに投資する計画だ。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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