戦後80年、その時々を生きた人々は様々な課題と向き合ってきました。バブル経済と崩壊、日米安全保障、憲法をめぐる議論……。キーパーソンの証言から現在や未来へのメッセージを探ります。

「バブル、我々は歴史をよく忘れる」 氏家純一・野村HD元社長

――1980年代のバブルをどう見ていましたか。

「おかしいと感じたのはスイス駐在の1980年代中ごろだ。日本企業が発行するエクイティリンクト債(転換社債やワラント債)が飛ぶように売れた。その資金が振り向けられた先が『特金・ファントラ(財テク商品で、特定金銭信託・ファンドトラストの略)』。まさにユーフォリア(陶酔)だった…記事を読む

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「金融危機、マクロ経済の大きな見立てに失敗」 白川方明・日銀元総裁

――80年の間には金融政策の失敗と指摘される出来事もありました。

「狂乱インフレの最大の原因は、金融緩和から引き締めへの転換の遅れだった。バブルについては日本経済が成功したと錯覚し過度な自信を持ったことが一番大きいが、長すぎた金融緩和も主因ではないにせよ有力な一因だった…記事を読む

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「中国とのパイプはない、政治家が作っていない」 福田康夫元首相

――父である福田赳夫元首相は1977年に東南アジア諸国連合(ASEAN)との友好をうたった「福田ドクトリン」を発表し、78年には中国と平和友好条約を締結しました。

「福田(赳夫)の考え方の根底にあったのは世界平和、その大本である隣国・中国、そして東南アジアとの安定した関係だ。それがないと結局は日本の安定にもつながらない。そういう意味において日中平和友好条約、福田ドクトリンはともに、アジア地域全体の安定を一番に考えたものだ…記事を読む

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「価値観は多様化、憲法は現実的な改正を」 岸田文雄前首相

――戦後80年の日本の歩みをどう評価するか。

「単純な時代ではなかった。あえて総括すれば日本人の勤勉さ、官民挙げた総合力で荒廃の中から立ち上がり、空前の発展と国際社会における確固たる立場を確保した。振り返れば誇るべき80年だったと思う…記事を読む

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「惰性で日米同盟続けるな」 谷内正太郎・元国家安保局長

――戦後日本は日米安保体制で平和を保ってきた。

「60年改定の日米安保条約はよく考えられた仕組みだ。米国が日本を守る義務を負う代わりに、日本が基地を提供する。当時の日本の国情にあった形でより対等性を求める内容で、評価している…記事を読む

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「ユーザーの感動に近づく方法考え抜け」 吉田憲一郎ソニーG会長

――戦後すぐに誕生したソニーは「世界初」を連発して躍進しました。

「やはり2人の創業者のアニマルスピリットでしょう。機会を捉えるエネルギーがすごかった…記事を読む

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「バブル期の日本に物差しはなかった」 斉藤惇・日本取引所元CEO

――日本は資本主義をうまく使うことができたのでしょうか。バブルをどう捉えますか。

「米国勤務を通じて学んだのは、日米でバリュエーションのやり方が違うこと。野村証券では毎週の推奨銘柄をお客さんに売り込むことが営業だった。一方、米国ではEPS(1株当たり利益)やIRR(内部収益率)、ROE(自己資本利益率)などの言葉が出てくる。衝撃を受けたのは不動産価格で、将来の収入を現在価値に割り戻して考えるんだと教わった。今では常識だが日本には全くない概念だった…記事を読む

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バブル崩壊、地に落ちた「信頼」 大蔵省と山一証券出身者の記憶

池田唯一・大和総研専務理事(写真左)と伊井哲朗・コモンズ投信社長

バブルとその後の崩壊で日本の金融システムとそれを動かす当局、金融機関の信頼も地に落ちた。大蔵省が1996年に大胆な規制改革「金融ビッグバン」に着手した翌97年、四大証券の一角、山一証券が自主廃業し、危機モードに発展した。当時、大蔵省証券局で金融ビッグバンを担当していた池田唯一・金融庁元総務企画局長と山一証券で社長のスピーチライターを務めていた伊井哲朗・コモンズ投信社長が当時を振り返った…記事を読む

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「戦後」を死語にしよう 昭和史研究者・保阪正康氏

――戦後80年を機会に日本の歴史をどう振り返るか。

「『戦後』を死語にしなければいけないと思っている。この言葉を使っている限り、1945年から後の日本の歴史はいつまでたっても(太平洋)戦争の時代との比較でしかなくなる…記事を読む

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次回の「MESSAGE 戦後80年」は消費税と社会保障をテーマに9月1日公開予定です。

【MESSAGE 戦後80年】

  • ・「この国のかたち」再考の時 憲法めぐる議論先送り、ゆがみ招く
  • ・ソニー復活、創業者がまいた変革の種 ものづくり超えるソフトの力
  • ・日本と中国、溶けない氷の壁ふたつ 「尖閣・歴史認識」越えられるか
  • ・力に回帰する世界、平和主義生かす 防衛・経済・文化を結集し外交を
  • ・「円高恐怖症」乗り越える 振り回された金融政策、繰り返す危機
  • ・令和バブルを起こさない 踊らぬ市場、「1億総投資家」が築く

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