
関東エリアの地方銀行やベンチャーキャピタル(VC)などが連携し、スタートアップを支援する組織「関東STARTUP RUNWAY(関東SR)」が立ち上がった。資金調達や事業計画の壁打ちなどの窓口を一元化することで、起業家と支援者の接点を作りやすくする。スタートアップの東京一極集中解消にもつながりそうだ。
関東SRは、VCのインキュベイトファンド(東京・港)が、サムライインキュベート(同)と協力して立ち上げた。スタート時には合計17の地銀や信用金庫、VCが参画しており、今後も増えていく可能性がある。3日には武蔵野銀行本店(さいたま市内)のイベントスペースを活用し、参画機関によるキックオフイベントが開かれた。

組織が注力するのは①資金調達②事業計画などのブラッシュアップ③起業家向けのイベント開催――などの支援。これらを一括の相談窓口で受け付け、個々の起業家を適切な金融機関やVCと橋渡しする。
スタートアップは一般的に、創業前後の「シード」、事業を開始し収益化を目指す「アーリー」、事業を成長・安定化させる「ミドル」、経営が安定し上場などの出口戦略を本格的に検討する「レイター」と、段階を踏みながら成長していく。シード・アーリー期の企業にとっては、関東SRのイベントなどを通じて多様な投資家らと接点を持てるメリットがある。
ミドル期以降についても、進出先での販路開拓、出口戦略として事業譲渡する際の相手探しなどで、参画機関のネットワークが生かせる。武蔵野銀行法人営業グループの高橋一能副グループ長は「事業展開のマーケットや資金調達の規模を拡大する局面で、関東SRの強みを発揮できるのではないか」と期待を寄せる。
金融機関にとってはこのほか、協調融資の選択肢が広がり、「参加行・VCとの連携によるノウハウの蓄積ができる」(足利銀行の担当者)点も魅力と言えそうだ。

SRは2020年に中四国で立ち上がったことを皮切りに、22年には中部、24年には東北と沖縄、今年に入ってからは九州と北海道でそれぞれ設立された。地方から企業価値が10億ドル以上の「ユニコーン」を育てることを目標に掲げる。
参画機関が持ち回りで幹事を務める自主運営の組織だが、各地で実績をあげており、中部ではSRを通じ22〜24年度に計22件の出資、10件の融資が実行された。
関東エリアは他のエリアと比べて創業機運が高い一方、成長の過程で都心に拠点を移すスタートアップは多い。関東SRでは、こうした共通課題を解決するための知見も共有していく。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。