台風15号で被害を受けた千葉県に設置された太陽光発電パネル=千葉県内で2019年10月、中島章隆撮影

 太陽光発電の設備にかける損害保険料が、この5年間で平均2倍近く増加していることが損害保険大手各社への取材で分かった。一部の損保では3倍弱に膨らんだ。自然災害の被災に伴う損壊や盗難被害が相次いで保険金支払いが増加したのに伴って保険料が値上がりしたためで、政府が地球温暖化対策として推し進める再生可能エネルギーの普及に逆風となっている。

 取材対象の損保大手は、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社。各社への取材をまとめると、契約する事業者側が損保側に支払った保険料の総額は、2020年度を基準とした場合、24年度は平均で約1・8倍に膨らんだ。最小の社は約1・1倍だったが、最大では約2・8倍に達した。

太陽光発電設備向けの損害保険料は2020年度と比べて2倍近く増えた

 一方、被害補償で損保各社が事業者に支払った保険金額は、20年度で合計294億円だった。しかし、23年度は2倍超の597億円となった。集計途中の24年度も448億円に達しており、さらに一定程度増える見通しだ。

 保険金支払額を押し上げている最大の要因が自然災害だ。日本損害保険協会が24年にまとめた報告書によると、支払いの約8割が自然災害に起因していた。中でも水害と雪害は一度の事故での支払単価が大きく、全体の5割を占めた。

 自然災害の被害増加に伴う保険料値上げは太陽光向けに限らず、風水害を被った住宅向けの火災保険や、「ひょう害」を補償する自動車保険でも同様に課題となっている。三井住友海上火災保険社長で同協会の船曳真一郎会長は6月の記者会見で、「金利や物価が上昇する勢いよりも(火災保険などの)保険金支払いが増えており、気候変動の大きさ(による影響)だと理解するのが自然だ」と述べた。

エネルギー基本計画の改定案を議論する総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の冒頭であいさつをする武藤容治経済産業相(手前右から2人目)=東京都千代田区の経産省で2024年12月25日、高田奈実撮影

 豪雨など自然災害の激甚化につながるとされる地球温暖化を防ぐため、政府は50年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す。電源構成に占める太陽光を中心とした再生可能エネルギーの割合は現在約2割だが、40年度までに4~5割に引き上げる目標だ。

 自然災害などの影響で保険料が高騰して事業参入の障壁となれば、再エネの普及が目標からますます遠のく恐れがある。

 ニッセイ基礎研究所の原田哲志准主任研究員は「(保険料の高騰などの)リスクの不透明さが新規参入の妨げになる恐れがあり、政府目標を達成する上でマイナスの要因となる。気候変動の悪影響はさらに激化していく可能性が高く、保険料の値上がりも今後より問題になるだろう」と指摘している。【山口智】

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