公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 運送事業者など法人契約者向けの軽油販売を巡る価格カルテル事件で、公正取引委員会は11日、石油元売り大手や総合商社の系列でガソリンスタンド(GS)を運営する8社の営業担当者宅などを独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで強制調査した。関係者への取材で判明した。

 関係者によると、各社の営業担当者らは持ち回りで幹事を務め、定期的に会合を開催。東京都内の運送事業者などに販売する軽油の価格引き上げなどを調整していた疑いがある。法人向けの軽油販売価格は毎月公表される「元売り価格」を参考に、月単位で見直すのが通例とされる。

 石油流通に詳しい桃山学院大学の小嶌正稔教授によると、軽油販売はフリート事業と呼ばれ、業界には「フリート会」や「F会」などと称される親睦会が地域ごとに数十年前から存在。不正の温床となった可能性があるという。

 小嶌教授は価格カルテルの背景として、石油製品は日本産業規格(JIS)に沿うため品質による差別化が難しいと指摘。「値下げをのまなければ取引先を変えられてしまうとの危機感から、対抗措置としてカルテルを結んだのではないか」と推察する。海外では販売会社が自社の給油所の施設を充実させるなど、価格以外の企業努力で差別化を図るケースもあるという。

 強制調査の対象は、東日本宇佐美(東京都)▽太陽鉱油(同)▽共栄石油(同)▽ENEOSウイング(名古屋市)▽エネクスフリート(大阪市)▽新出光(福岡市)▽キタセキ(宮城県)▽吉田石油店(香川県)――の8社。公取委は10日に8社の本社などを、11日は営業担当者宅などを調べた。検察当局への刑事告発を視野に価格カルテルの実態解明を進める模様だ。

 全日本トラック協会は11日、「容疑が事実であれば、国民の暮らしと経済活動を支える公共的使命を担い、さまざまなコスト増に苦しむトラック運送業界が不当な価格で軽油を購入していたことになり、誠に遺憾」とのコメントを公表。公取委に「厳正な対応」などを求めた。【山田豊】

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