インタビューに応じる京成電鉄の天野貴夫社長=千葉県市川市の京成電鉄本社で2025年8月18日午後3時22分、平塚雄太撮影
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 京成電鉄(本社・千葉県市川市)で6月、8年ぶりに社長が交代し、天野貴夫氏(59)が就任した。インバウンド(訪日客)が増加し成田空港では新滑走路の整備が進む中、都心と成田空港を結ぶ鉄道会社としてどう対応していくのか。【聞き手・平塚雄太】

 ――社長としての意気込みは。

 ◆まずは安全安心が大切で、お客様から信頼していただくことが重要だ。一方でインバウンドの増加が続いており、その対応も着実に進める必要がある。成田空港は新滑走路の増設によって機能強化が進み、就労人口も増えると見込まれている。エアポートシティ構想で周辺を広域的に活性化させようという動きもある。グループとしてここに関与して貢献をしていきたい。

 ――インバウンド増加で、成田空港から東京都心を結ぶ輸送力強化が課題となっている。

京成スカイライナー=京成電鉄提供
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 ◆2010年に成田スカイアクセス線が開業し、(最短)36分で東京都内と空港を結ぶようになって以来、「成田は不便じゃない、遠くない」ということを、成田空港に関係する他の企業とともにPRしてきた。それもあって(京成上野駅と成田空港を結ぶ特急の)スカイライナーは非常に活況になっている。ただ上野を行き来する列車の増発には限界がある。

 そこで成田空港から押上駅に直通で行ける新型有料特急の導入を28年度に計画している。空港から東京スカイツリーに近い押上駅までは現在、青砥で乗り換えるため最速でも45分程度かかるが、直通の新型特急では30分台を目指している。加えて(酒々井町にある)宗吾車両基地の拡充工事を推進し、空港周辺の線路を複線化するべく関係機関とともに検討していく。そうした施策で輸送力を向上させていきたい。

 ――本業に加えて都内での賃貸物件の取得や不動産の開発にも力を入れている。

 ◆私どもは本業の鉄道と開発の2本柱だ。もちろん鉄道の収入が大きいが、不動産賃貸物件も積み上げて、安定収入としてきちんと2本目の柱として強化すべく取り組んでいる。

 ここ数年は大型物件の取得や沿線の賃貸住宅の拡充に取り組んだ。都内では賃貸住宅を約400室取得しており、若い家族層の引っ越しが進むなど人気だ。事業収益が上がるだけでなく、沿線活性化にも資するため継続したい。

インタビューに応じる京成電鉄の天野貴夫社長=千葉県市川市の京成電鉄本社で2025年8月18日午後3時30分、平塚雄太撮影
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 県内では特に新鎌ケ谷駅周辺の開発に力を入れている。県や市の保有地を活用したマンションや商業施設の開発を進めている。新津田沼駅周辺ではイオンと提携して、イトーヨーカドー津田沼店が入居していた「津田沼12番街ビル」を改修し、新たなランドマークにしようと整備している。

 ――沿線で言えば、プロ野球・日本ハムファイターズが2軍拠点を鎌ケ谷市から北海道内に移転させる方針を発表した。影響はあるか。

 ◆JR船橋法典駅などから鎌ケ谷スタジアム周辺まで路線バスを運行しており、試合がある時は結構なお客様が乗っておられた。その利用は減るだろう。もちろんお残りいただければありがたいが、球団側も事情があると聞いており、別の方法で跡地が活性化されていけばいいなと思う。

天野貴夫(あまの・たかお)

 東京都出身。明治学院大卒後、1988年に京成電鉄入社。鉄道本部運輸部長、京成建設社長などを経て、2025年6月から京成電鉄社長。趣味は旅行と音楽鑑賞で、サザンオールスターズなどのライブにも行くという。

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