人工知能(AI)をはじめとするデジタル技術の進展が金融ビジネスに変革をもたらしている。日本経済新聞社は「AI時代の金融経営」をテーマにしたシンポジウムを開く。10月9日の開催を前に、登壇するメガバンクと証券会社の5人のトップにインタビューした。初回は三井住友フィナンシャルグループ(FG)の中島達社長。

中島社長はデジタル技術の生かし方次第で金融機関の競争力が変わると強調した。そのうえでリテールや法人分野の実例を挙げ「伝統的な銀行業務を抜本的に変える」と語った。

三井住友は個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」を2023年から始めた。2年強で600万(7月時点)口座を獲得し、銀行業界では異例のヒットとなった。中島社長は「オリーブは単なるアプリではなく、リテールのビジネスモデルを変えるドライバーだ」と説明する。

オリーブはデジタル上でサービスがほとんど提供できる。三井住友は銀行口座とクレジットカードを一体で提供しているが、SBI証券やマネーフォワードと組んだサービスもある。協業相手を「どんどん増やしていきたい」との考えを明らかにした。

顧客獲得はスマートフォンやパソコンを通じてできるため、店舗の役割は大きく変わる。三井住友は30人程度が常駐していた支店を6〜7人が働く「ストア」と呼ぶ超小型店舗に移行する取り組みを進めている。支店の業務を減らし、浮いたコストの一部をオリーブの機能向上にあてる。

中島 達(なかしま・とおる)
86年(昭61年)東大工卒、住友銀行(現三井住友銀行)入行。14年執行役員、23年三井住友FG副社長、23年12月から現職

さらに法人向け営業でもデジタルを最大限活用する。法人口座開設や取引を完結できるデジタルサービス「Trunk(トランク)」を5月から始めた。

法人融資は「担当者が足しげく顧客のもとに通う人海戦術で、優秀なバンカーに依拠したビジネスモデル」(中島社長)。トランクによって、手が回りにくかった中小企業へのアプローチが可能になるという。3年で30万口座、預金総額3兆円の獲得を目指す。

中島社長は社員教育の重要性に触れ「AIに慣れ親しんでもらい、自由に使いこなせるようになることが第一だ」と話す。ユニークな試みとして、中島社長の視点や性格などを反映した「AI-CEO(最高経営責任者)」を開発した。社員が法人向けの提案や企画書などを壁打ちできるようにしている。

「金融ニッポン」シンポジウム
◇日時、会場
10月9日(木)午後1時〜2時30分、日経ホール(東京・大手町)。入場無料
◇申し込み
会場での参加はウェブサイト(https://www.nikkei.com/live/event/EVT250807003)からお手続きください。10月1日(水)に締め切ります。
◇講師 木原正裕・みずほフィナンシャルグループ社長、奥田健太郎・野村ホールディングス・グループ最高経営責任者、亀澤宏規・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長、荻野明彦・大和証券グループ本社社長、中島達・三井住友フィナンシャルグループ社長

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