ヒジャブで頭部を覆った女性が次々に教室に姿を見せると、江藤セデカさん(67)が笑顔で声をかけ、抱きしめた。
2023年から、日本で暮らすアフガニスタン人女性のための無料の日本語講座を千葉市で続ける。約120人が登録、毎週20~60人が参加する。男性の同伴なしの外出を許されず、家にしか居場所がない女性は多い。「ここなら夫に外出を許してもらえる」と話す20代の受講生は、17歳のとき親が決めた結婚のため来日したという。
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「みなさんを家から一歩、外に出したい」。そんな思いが通じ、千葉明徳学園による教室の提供や、女性ボランティア講師らの協力を得て、開講にこぎ着けた。
首都カブールの恵まれた家庭に育ち、国立大を卒業。留学生だった日本人の夫(故人)と出会い、1983年に来日した。
故郷は紛争のさなか。心配でニュースを見ても言葉がわからない。長女が生まれると幼稚園の連絡帳が読めなかった。「子どもの力になれないことは悔しいですよね」。語学学校で日本語を身につけ、法廷通訳をするまでに。貿易会社を営みながら、03年にはNPOを立ち上げて物資を送って故郷を支援してきた。
イスラム主義勢力タリバンが復権して8月で4年。中学以上の女子教育や就労も禁じられた。日本に逃れる人も増え、在日アフガニスタン人は6千人を超す。
受講者の中には日本語がわかるようになり、バイトを見つける人、ひとりで役所の手続きができるようになる人も出てきた。「日本ではお年寄りが手押し車で買い物をしている。いろんな人を見て話すことが生きる希望をくれる。町は大学。飛び出してほしい」
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アフガニスタン東部では、8月31日深夜にマグニチュード(M)6・0の地震が起きた。被害の大きかった被災地は谷間にあり、住民は土と石でつくった家で暮らしてきた。「家畜や荷物を取りに戻り、余震に遭って犠牲になった人もいる。病院に行く女性が少なく、ボランティアの看護師も足りないと聞いて受講生も心配しながら過ごしている」と江藤さんは話す。10月末まで被災地支援の募金を実施し、テントや衣類を現地に送る予定だ。
支援の相談は特定非営利活動法人イーグル・アフガン復興協会(メールアドレス eagleafghan.tokyo@gmail.com)へ。
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