夢洲から

 大阪・関西万博の会場で9月中旬、セルビアの文化や歴史を紹介する「ナショナルデー」があった。

 セルビアといえばこれまで、世界史の教科書と、新聞やニュースで見聞きしたぐらい。特に意識したことはない「遠い国」だった。

 だがナショナルデーでの説明で、日本の夏に欠かせない蚊取り線香と深いつながりがあることを知った。

 そこで語られたのは「金鳥(きんちょう)」で知られる大日本除虫菊(大阪市)の創業者、上山英一郎氏についてだった。上山氏はセルビア原産の除虫菊を使って、1890年に世界で初めて蚊取り線香を開発したというのだ。

 これが縁で上山氏は1929年、セルビアがユーゴスラビア王国だった時代に、国王から在大阪名誉領事にも任命されていた。

 万博会場で取材をしていると、これまで知らなかった外国と日本の縁を知ることができる。万博のだいご味のひとつだ。

 もっと知りたくなって後日、大日本除虫菊の本社を訪ねた。上山氏を曽祖父にもつ上山直英会長(74)が迎えてくれた。上山会長も現在、在大阪セルビア名誉総領事館の名誉総領事を務めている。

 約140年間にわたる同社とセルビアの交流を詳しく語ってくれた。そして「これからもつながりを大切にしていきたい」とも。

 2027年の万博はセルビアの首都ベオグラードで開かれる。今度はその会場の来場者が、蚊取り線香を縁に日本のことをもっと知りたいと思ってくれることを願う。

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