TICAD(ティカッド)とは?
日本政府が主導する国際会議TICADが20日午後、横浜市で開幕し、石破総理大臣が基調演説を行いました。この中で石破総理大臣はアフリカの開発をめぐり「相手のことを知り、相手の国と共に考え、解決策をつくっていく。アフリカの発展のためには現地に根ざした解決策が重要だ」と述べ、各国のニーズを把握しながら協力強化を図る考えを示しました。その上で、人口の年齢の中央値が19歳のアフリカでは、若者や女性の能力向上と雇用の確保が成長のカギになるとして、今後3年間に産業や保健・医療、教育などの幅広い分野で30万人の人材を育成するとともに、AIの分野では3万人を育成する方針を表明しました。さらに、企業のスタートアップの後押しや生産性の向上を図るほか、官民合わせて15億ドルの資金動員を目指すと説明しました。また、経済成長には地域の連結性の強化も欠かせないとして、インドから中東、アフリカにかけての一帯を新たな経済圏と位置づける構想「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」を打ち出しました。一方、感染症対策などをめぐっては、途上国でのワクチンの普及に取り組む国際団体「Gavi(ガビ)ワクチンアライアンス」に対し、今後5年間で最大で5億5000万ドルを拠出する考えを示しました。結びに石破総理大臣は「アフリカ発のソリューションが日本を含む国際社会を救う時代だ。日本とアフリカが1つになり、革新的な課題解決策を共につくり、アフリカと世界が直面する課題に立ち向かっていきたい」と強調しました。
TICAD=アフリカ開発会議は、1993年から日本政府が主導して開いてきた国際会議です。現在は3年に一度開かれていて、アフリカ各国の首脳や国際機関、それに企業などの関係者が、日本との経済協力や開発援助、それにアフリカが抱える課題などについて、広く議論する場となっています。TICADは当初、先進国による大規模な援助が冷戦の終結によって縮小する中、日本がアフリカとの連携を強化しようと開発援助に重点を置いて始まりました。その後、天然資源の価格高騰などによってアフリカ各国が経済発展を遂げると、テーマは「援助から投資へ」と変化し、アフリカを投資先と位置づけて民間企業によるビジネスチャンスの拡大が注目されるようになります。こうした中、アフリカの成長を取り込もうと、中国や韓国、それにインドネシアやサウジアラビアなども相次いでアフリカとの国際会議を開くようになりました。このうち中国は、2000年から中国版TICADともいわれる「中国アフリカ協力フォーラム」を3年ごとに開催し、インフラ建設や巨額の融資を続けて結びつきを強めてきました。またロシアもアフリカとの経済会議を2019年から開催し存在感を高めようとしていて、特に2022年に始まったウクライナ侵攻以降、欧米との対立が強まる中で、よりアフリカとの関係を重視しています。一方、アメリカはことし1月にトランプ大統領が就任して以降、対外援助を大幅に削減し、援助に頼ってきた現場では資金難のため、さまざまな活動が停止する事態にもなっています。中国やロシアなどがアフリカとの結びつきを強める中、日本としては9回目となる今回のTICADで官民の連携を深め、日本企業による投資の促進やアフリカとのいっそうの関係強化につなげられるかが問われることになります。
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