
【ワシントン=野一色遥花】米連邦準備理事会(FRB)が15日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)は、前回の9月上旬時点から米経済活動が「ほぼ変わらなかった」と総括した。関税で価格が上昇し個人消費が減る中、人工知能(AI)の導入で労働需要が鈍化している。
ベージュブックは12の米地区連銀の報告内容をまとめた資料で、企業などに聞き取りをした内容をもとに景況感を報告している。
全米12地区のうち、東部ニューヨークと中西部ミネアポリスなど4地区では経済活動がわずかに縮小した。中西部のクリーブランドや南部アトランタなど5地区では前回から横ばいだった。
米連邦政府閉鎖の影響で雇用統計などの公式データが一部、公表されなくなっている中でベージュブックに市場関係者の注目が集まっている。FRBのパウエル議長は14日、地方政府や民間のデータ、ベージュブックが「有益な情報源となる」と話した。
複数の地区・業種で労働需要は鈍化した。理由として回答者からは景況悪化のほか、AIへの投資を優先させているとの声が出ている。中西部カンザスシティー地区ではビジネス・専門サービス業者から、AI活用を受けて労働需要が減り、大規模な解雇を行ったとの声があった。
「関税」への言及は前回の報告書から4割減り64回だったものの、全12地区で言及があった。ニューヨーク地区のコーヒー会社からはブラジルからの輸入価格の高騰で収益が悪化しているとの声があった。ボストン地区では関税によるコスト上昇をまかなうため解雇を進めた回答者もいた。
消費者の負債を懸念する声もあがった。中西部セントルイス連銀のまとめでは、複数の回答者から消費者のローン延滞率の上昇が足元の数カ月間で目立っており、今後も続くとの観測があった。
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