
【ニューヨーク=竹内弘文】米議決権行使助言大手グラスルイスは15日、上場企業の株主総会議案に対しグラスルイス独自の見解に基づく賛否推奨を2027年から取りやめると発表した。投資家の評価軸に沿って複数の見解を提示するようにする。推奨はリベラルな価値観を投影したものだと米国の保守層から批判が高まっていた。
議決権助言の市場はグラスルイスと米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)の2社が事実上二分している。両社はコーポレートガバナンス(企業統治)の観点から、総会で諮られる議案を吟味して賛成・反対を推奨する。
推奨内容は多くの機関投資家が参照しており、議案可否に影響を及ぼすこともある。日本企業の株主総会シーズンでもグラスルイスやISSの賛否推奨が話題になる。27年から複数の見解をどのようにまとめるかは現在検討中だが、会社側の立場に寄った論点や企業統治の慣行や原則に基づく論点などが盛り込まれる見通しだ。
米国の保守層の間では近年、議決権助言大手2社がESG(環境・社会・企業統治)の観点から上場企業の提案に反対推奨をするのは経営への圧力ではないか、という声が強まっていた。保守層はESGはリベラル的な価値観に基づく政治運動と見なし非難する。攻撃の対象が議決権行使助言会社にも及んでいる。
「法的に許容される事業を阻害しないようにするため、どのような手立てをとっているか」。米議会上院銀行委員会のティム・スコット委員長ら共和党の上院議員3人は5月、グラスルイスとISSに対しESG投資の観点から評価が低くなりやすい事業領域を列挙し、見解をただす質問状を送った。
保守層の強い南部テキサス州では6月、議決権行使助言会社がESGなど非財務要因に基づいて会社提案に反対推奨する場合、具体的な財務分析の提供を義務付ける州法が成立した。連邦政府と州政府レベル両方で議決権行使助言への圧力が強まっていた。
ロイター通信によるとISSは今後も自社の見解に基づく賛否推奨を続ける方針という。ただ、ISSも新サービスで、顧客投資家の議決権行使に関する判断を支援するための中立的な調査リポートの提供を始める。同リポートは賛否推奨を含まない。
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